個人事業主やフリーランスが入るべき保険は?
民間保険についても解説

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個人事業主やフリーランスが加入する公的医療保険制度や公的年金制度は、会社員や公務員が加入できる健康保険や厚生年金に比べ、保障が十分とはいえません。そのため、個人事業主やフリーランスはさまざまなリスクに対して自分で備えなければなりません。

ここでは、個人事業主やフリーランスが加入する公的医療保険制度や公的年金制度、公的介護保険の他、自身のリスクに備えるための民間保険等について解説します。

個人事業主やフリーランスが加入する公的医療保険制度

日本は国民皆保険制度を採用しています。国民皆保険制度はすべての国民が公的な医療保険に加入する制度で、個人事業主やフリーランスは国民健康保険に加入し、会社員や公務員は健康保険に加入します。まずは、個人事業主やフリーランスが加入する公的医療保険制度について見てみましょう。

国民健康保険と健康保険の違い

個人事業主やフリーランスが加入する国民健康保険と会社員が加入する健康保険の違いとして、健康保険の保険料は会社と従業員が折半で支払うのに対し、国民健康保険は全額が加入者の自己負担となることが挙げられます。

また、健康保険では配偶者や子ども等を被扶養者にできますが、国民健康保険には被扶養者の概念がなく、一人ひとりに保険料が課されます。さらに、健康保険には出産手当金や傷病手当金の制度がありますが、国民健康保険には基本的にこれらの制度はありません。

■個人事業主・フリーランスと会社員が加入する公的医療保険制度の違い

個人事業主・フリーランス会社員

加入する保険

国民健康保険

健康保険

保険料の負担割合

全額自己負担

会社と折半

医療費の自己負担

3割(6歳未満および70~74歳は原則2割、75歳以上は原則1割)

傷病手当金・出産手当金

なし

あり

保険料の算出方法

前年の所得により算出される

一定期間の給与等の平均額により算出される

扶養にまつわる対応

扶養の考え方はなく、一人ひとりに保険料が課される

条件を満たせば配偶者や子どもを被扶養者にでき、被扶養者の病気やケガ等についても保障される。扶養人数が増えても保険料は一定

保険料の支払い方法

自分で支払う

給与から天引き

会社員を辞める場合は健康保険の任意継続が可能

会社員を辞めて個人事業主やフリーランスになる場合は、「資格喪失日の前日までに健康保険の被保険者期間が2か月以上ある」という条件を満たし、資格喪失日から20日以内に、任意継続の手続きを行えば、会社員を辞めた後も最長2年間は健康保険を継続することができます。ただし、保険料は会社との折半ではなく、全額自己負担です。

なお、任意継続した場合と、国民健康保険に加入した場合のどちらが保険料を抑えられるかは、ケースバイケースです。一般的には、退職前の収入が多いと、任意継続のほうが保険料は安くなる傾向があります。また、任意継続でも家族の扶養を継続できるため、扶養家族がいる場合は、任意継続のほうが世帯全体の保険料を抑えられる可能性が高いでしょう。

条件を満たせば会社員や公務員等の家族の健康保険に加入できる

個人事業主やフリーランスでも、家族が健康保険に加入していて、その健康保険の被扶養者となるための条件を満たしている場合は、家族の健康保険の被扶養者になることができます。この場合は、国民健康保険に加入する必要はありません。ただし、収入が年間130万円を超える等、健康保険の被扶養者の条件を満たさなくなった時点で扶養から外れ、国民健康保険に加入することになります。なお、個人事業主やフリーランスが被扶養者になれるかどうかや、その条件は健康保険組合によって異なるため、注意が必要です。

個人事業主やフリーランスが加入する公的年金制度

日本の公的年金制度は、1階部分にあたる国民年金と2階部分にあたる厚生年金から成り立っています。そのうち、個人事業主やフリーランスが加入するのは国民年金です。一方、会社員や公務員は国民年金と厚生年金の2つに加入します。

公的年金制度で受けられる保障には、基本的に65歳から受取ることができる老齢年金の他に、被保険者が亡くなった場合に遺族が受取る遺族年金、所定の障害状態になった場合に受取ることができる障害年金があります。

しかし、会社員や公務員とは異なり、個人事業主やフリーランスが加入する国民年金には2階部分がありません。そのため、厚生年金加入者に比べると将来受取る年金額に大きな差が生じます。ただし、国民年金にしか加入できない個人事業主やフリーランスには、将来受取る国民年金に上乗せできる公的な制度として、付加年金と国民年金基金があります。どちらも加入は任意です。

付加年金は、付加保険料(400円)を上乗せして納めれば、将来の年金額を増やすことができます。付加年金の年金額は、「200円×納付月数」です。国民年金基金は、月額6万8,000円を上限に掛金を支払うと、将来の年金額を増やすことが可能です。ライフプランに合わせて年金額や受取期間を設定でき、掛金は全額が社会保険料控除の対象となります。なお、国民年金基金は付加年金も代行しているため、国民年金基金の加入者は付加保険料を支払うことはできません。

個人事業主やフリーランスが加入する公的介護保険

個人事業主やフリーランスも、40歳になると公的介護保険への加入が義務付けられます。公的介護保険では、会社員等と同様に、40歳から64歳は介護保険の第2号被保険者、65歳以上になると介護保険の第1号被保険者になります。保険料は国民健康保険といっしょに徴収され、個人事業主やフリーランスの場合は全額が自己負担です。

個人事業主やフリーランスのリスクに備える民間保険

個人事業主やフリーランスが加入する国民健康保険には、会社員が加入する健康保険のように、傷病手当金や出産手当金の制度がありません。また、そもそも個人事業主やフリーランスには有給休暇もないため、病気やケガで働けなくなった際には生活が厳しくなってしまうリスクがあります。

また、加入が義務付けられている公的年金制度も国民年金のみなので、万が一の際の遺族年金や障害年金の額は厚生年金と比較すると少なく、老後に受取る老齢年金も生活を支えるには十分とはいえないでしょう。そのため、万が一の時や老後のために自分で備える必要があります。ここでは、個人事業主やフリーランスがリスクに備えるための民間保険について解説します。

就業不能保険や所得補償保険

個人事業主やフリーランスのリスクに備える民間保険として、就業不能保険や所得補償保険が挙げられます。就業不能保険は、病気やケガで長期間働けなくなった際の収入減少を保障する保険です。また、所得補償保険は、短期的に働けなくなった際の収入減少をカバーする保険です。

会社員の健康保険には、病気やケガで働けない場合には、最大1年6か月間、給与の約3分の2を受取れる傷病手当金があります。しかし、個人事業主やフリーランスには基本的にこのような制度はないため、就業不能保険や所得補償保険等で備えておくと安心です。

医療保険

医療保険も、個人事業主やフリーランスのリスクに備えられる民間保険といえるでしょう。国民健康保険で医療費の自己負担は最大3割に抑えられますが、先進医療の技術料や入院中の食事代、4人以下の病室に入院した場合に発生する差額ベッド代等は公的医療保険の対象外です。民間の医療保険は入院や手術をした時に給付金を受取れるものが一般的で、公的医療保険ではカバーできない部分に備えられます。

個人年金保険

個人年金保険も、個人事業主やフリーランスにメリットのある民間保険のひとつです。個人年金保険は、老後に受取る公的年金を補う目的で加入する私的年金です。個人事業主やフリーランスが加入する国民年金だけでは、老後の生活費として十分とはいえない場合もあり、個人年金保険は、老後に必要な資金を確保する方法のひとつといえるでしょう。

死亡保険

個人事業主やフリーランスがリスクに備えるための民間保険として、死亡保険も挙げられます。死亡保険は、被保険者が死亡または保険会社所定の高度障害状態となった場合に保険金が支払われるもので、一家の稼ぎ手に万が一の事態があった時に、遺族の経済的負担を軽減する目的の保険商品です。

死亡保険には、大きく分けて定期保険、終身保険、養老保険の3タイプがあり、多くの保険会社からさまざまな保険商品が販売されています。個人事業主やフリーランスは、会社員に比べて遺族年金も少ないので、遺族に必要な生活費を確保する手段を考えておく必要があります。

火災保険・地震保険

火災保険・地震保険も、個人事業主やフリーランスのリスクに備える民間保険といえるでしょう。住まいを店舗とする場合や、テナントを借りた場合、これらの物件に損害を受けた場合に備えて火災保険・地震保険への加入を検討する必要があります。

個人事業主やフリーランスが加入できる公的機関が運営する制度

個人事業主やフリーランスには退職金がないことや連鎖倒産を防ぐ仕組みが必要なことから、個人事業主やフリーランスが利用できる公的機関が運営する制度として、以下のような制度が設けられています。公的機関が運営する3つの制度について解説します。

小規模企業共済制度

個人事業主やフリーランスが加入できる公的機関の制度に、小規模企業共済制度が挙げられます。小規模企業共済制度は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が取扱う、個人事業主やフリーランス、小規模企業の経営者のための退職金制度です。掛金を毎月積み立て、退職・廃業時に共済金を受取ります。掛金の額は、月1,000円から7万円までで自由に設定できます。掛金として積み立てた分は、全額が所得税の計算における小規模企業共済等掛金控除の対象です。

中小企業退職金共済制度

中小企業退職金共済制度も、従業員を雇用している個人事業主が加入できる公的機関が運営する制度のひとつです。独立行政法人勤労者退職金共済機構の中小企業退職金共済事業本部(中退共)が取扱う、中小企業の従業員を対象とした退職金制度です。事業主が毎月掛金を支払い、従業員が退職した際には中退共から退職金が直接支払われます。掛金は全額が非課税となり、掛金の一部は国からの助成もあるため、この制度を利用することで、負担を軽減して従業員に退職金を支給できます。

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)

経営セーフティ共済も、個人事業主やフリーランスが加入できる公的機関が運営する制度です。経営セーフティ共済を利用すれば、取引先が倒産して資金繰りが難しくなった時に、必要な資金を借りることが可能です。無担保・無保証人ですぐに借りることができ、借入金の上限は「回収困難となった売掛金債権等の額」または「拠出した掛金額の10倍(最高8,000万円)」のどちらか少ないほうの額となります。掛金は月5,000円から20万円までの範囲で自由に設定でき、掛金として拠出した金額は、損金または必要経費に算入できます。

個人事業主やフリーランスのリスクに備えて民間の保険商品を検討しよう

個人事業主やフリーランスの公的医療保険制度や公的年金制度は、会社員等と比較すると保障が少なく、自分でリスクに備えなくてはなりません。民間の保険には、病気やケガでの収入減少に備える就業不能保険や所得補償保険、被保険者に万が一のことがあった際の遺族の経済的負担を軽減する死亡保険等があります。公的な制度ではカバーできないリスクへの備えとして、民間の保険商品への加入を検討しましょう。

「ほけんの窓口」では、医療保険や個人年金保険、死亡保険等の保険に加え、国民年金の保険加入者が任意で追加加入できる国民年金基金も取扱っています。また、保険に関する質問や見積もり等が、何度でも無料で相談できるので、個人事業主やフリーランスがリスクに備えるための保険について疑問点がある場合は、ぜひお気軽にご相談ください。

監修者プロフィール

原 絢子
日本FP協会 AFP認定者、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

自分で保険の見直しを行ったのをきっかけに、お金の知識を身につけることの大切さを実感し、ファイナンシャルプランナーとして活動を始める。モットーは「自分のお金を他人任せにしない」。一人でも多くの人がお金を味方につけて、自分の思い描く人生を歩んでほしいと、マネーリテラシーの重要性を精力的に発信している。FPサテライト株式会社所属FP。

原 絢子さん
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