糖尿病でも入れる保険はある?医療保険の選び方のポイントを解説
国内の糖尿病患者数は年々増加傾向にありますが、気になるのは「糖尿病でも医療保険に入れるのだろうか?」ということです。なかには、「糖尿病等の持病があると、医療保険に入れないのではないか」と不安を感じている人もいるかもしれません。糖尿病でも、病気の症状や保険商品によっては、医療保険に加入できることもあります。では、糖尿病でも入れる医療保険とはどのようなもので、保険選びの際はどのようなポイントに気をつければいいのでしょうか。
ここでは、糖尿病でも加入しやすい医療保険や、糖尿病の人が医療保険を選ぶ際の注意点等について解説します。
糖尿病とはどのような病気?
糖尿病は、代表的な生活習慣病のひとつです。まずは、糖尿病がどのような病気なのかを確認しておきましょう。
糖尿病は高血糖が慢性的に続く病気
糖尿病は、インスリンの作用不足により、高血糖が慢性的に続く病気です。インスリンは膵臓から出るホルモンで、血液中のブドウ糖(血糖)を一定の範囲に収める働きを持っています。インスリンが不足したり作用が低下したりすると、血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)の上昇を抑える働きが低下し、慢性的に血糖値が高い状態になってしまいます。
糖尿病は、自己免疫疾患等が原因の「1型糖尿病」と、遺伝的要因や過食・運動不足といった生活習慣による「2型糖尿病」の大きく2つに分けられ、日本人の糖尿病患者の多くは2型です。その他、特定の疾患によるものや妊娠糖尿病等もあります。
なお、糖尿病は初期には症状がほとんどありません。しかし、進行すると動脈硬化が進み、脳卒中や心筋梗塞の原因になることがあります。また、糖尿病の3大合併症として、網膜症、腎症、神経障害があり、自覚症状のないまま発症するリスクがあるため、早めの受診と予防が大切な病気です。
現在、日本において糖尿病と糖尿病予備軍とされる人の合計は、2,000万人といわれています。厚生労働省の「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要」によれば、糖尿病が強く疑われる人の割合は男性19.7%、女性10.8%で、年齢が高くなるほど、割合は増加傾向にあります。
※出典:厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要」P.20
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf
糖尿病による平均入院日数は30.6日
厚生労働省の「令和2年(2020)患者調査の概況」によると、糖尿病による入院日数は、平均30.6日です。また、入院日数は年齢が上がるにつれて長期化する傾向があります。
<糖尿病患者の平均入院日数>
総数 | 0~14歳 | 15~34歳 | 35~64歳 | 65歳以上 | 70歳以上 | 75歳以上 |
---|---|---|---|---|---|---|
30.6日 | 16.7日 | 11.5日 | 15.6日 | 40.7日 | 44.8日 | 51.1日 |
※出典:厚生労働省「令和2年(2020)患者調査の概況」P.13
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/20/dl/heikin.pdf
糖尿病は、生活習慣の改善を含めた長期的な治療が必要な病気です。それに加えて、長期入院や合併症のリスクにも備える必要があります。治療が長引くと、その分、治療費も高額になってしまうため、医療保険で備えたいと考える人も多いでしょう。
糖尿病でも医療保険に加入できる?
糖尿病の人でも、加入しやすい医療保険があります。糖尿病でも加入しやすい医療保険は、「引受基準緩和型医療保険」や「無選択型医療保険」です。
一般的に、医療保険に加入する際には、健康状態等を保険会社に告知しなければなりません。糖尿病になると、健康な人に比べて入院や手術のリスクが高くなるため、通常の医療保険への加入は難しいケースが多い傾向にあります。ただし、糖尿病でも、引受基準緩和型医療保険や無選択型医療保険であれば、加入できることもあります。それぞれの概要について見ていきましょう。
引受基準緩和型医療保険
引受基準緩和型医療保険は、通常の医療保険に比べて加入時の審査がゆるやかな医療保険です。加入時の告知項目(保険会社からの質問)が通常の医療保険より少なく設定されているため、糖尿病等、健康状態に不安がある人でも加入しやすいでしょう。
しかし、加入条件が緩和されている分、保険料は通常の医療保険よりも割高です。また、加入後の一定期間は給付金が減額される「給付金削減期間」が設けられている商品が多い点にも注意が必要です。
無選択型医療保険
無選択型医療保険は、健康状態にかかわらず加入できる医療保険です。無選択型医療保険では、申込みにあたり、健康状態に関する告知や医師による診査は必要ありません。原則として、健康状態を理由に加入を断られることはないため、上述した引受基準緩和型医療保険に申込みができなかった人でも、無選択型医療保険なら加入できる可能性があります。
ただし、健康状態にかかわらず加入できる反面、無選択型医療保険の保険料は、引受基準緩和型医療保険よりもさらに割高になっています。また、無選択型医療保険は商品数が少なく、給付金の上限額も低く設定されていることがほとんどです。加えて、免責事由の範囲が広いため、加入を検討する際には条件をよく確認しましょう。
糖尿病の人が医療保険を選ぶ際のポイント
糖尿病の人が医療保険を選ぶ際には、意識しておきたいいくつかのポイントがあります。糖尿病で医療保険への加入を検討する際には、次の点に注意しましょう。
保障内容と保険料のバランスを考える
糖尿病の人が医療保険に加入する場合、保険料が高額になる可能性があるため、保障内容と保険料のバランスを考えることが大切です。糖尿病でも入りやすい医療保険には、引受基準緩和型医療保険や無選択型医療保険がありますが、これらはいずれも通常の医療保険より保険料が割高です。保険料の払込みが家計を圧迫しないか、申込み前にしっかり確認しておくことをおすすめします。
前述したように、糖尿病は世代によって平均入院期間が変わってくるため、年齢に合った保障内容を考えてもよいでしょう。例えば、年齢が若い場合は、早期治療に備えて、10日程度の入院でも手厚い保障が受けられる一時金のあるプランを検討するのもひとつの方法です。一方、高齢になってくると、長期入院のリスクにも備えられるプランが望ましいといえます。
ただし、引受基準緩和型医療保険の多くは終身型で、加入後にプランを変更することはできません。医療保険に加入する際には、保障内容と保障期間、保険料のバランスを考えて選ぶことが大切です。
糖尿病の合併症リスクに備える
合併症に備えることも、糖尿病の人が医療保険に加入する際のポイントです。糖尿病は、それ自体は直接命に関わる病気ではありません。しかし、自覚症状がないまま病気が進行し、重篤な合併症につながる可能性があることが大きなリスクといえます。
なかでも、網膜症、腎症、神経障害は糖尿病の3大合併症と呼ばれており、場合によっては、透析治療が必要になったり、失明したりする可能性があります。もし合併症が発症した場合、これまでどおりの仕事や生活が成り立たなくなってしまうかもしれません。
そのようなリスクに備えるには、健康状態が悪化する前に医療保険に加入しておくと安心です。医療保険に加入するなら、できるだけ早めに検討を進めましょう。
糖尿病の人が医療保険に加入する際の注意点
糖尿病の人に限ったことではありませんが、医療保険に加入する際には、現在の健康状態や既往歴等を正直に報告しなくてはなりません。糖尿病等の持病があると、「保険に入れないのではないか」という不安から、できるだけ隠したい気持ちになるかもしれません。しかし、嘘や間違った内容の告知をすると、告知義務違反となり、保険契約が解除されたり、保険金や給付金を受取れなかったりするケースもあります。いざという時に保障を受けられるように、医療保険に申込む際には、必ず事実を正しく告知するようにしてください。
糖尿病でも入りやすい医療保険を知って、将来のリスクに備えよう
「糖尿病だと医療保険に入れない」と思っている人は多いかもしれませんが、糖尿病の人でも加入しやすい医療保険はあります。引受基準緩和型医療保険は、一般的な医療保険に比べて告知項目が少なく、健康状態に不安があっても入りやすい医療保険です。また、無選択型医療保険は告知や医師の診査が不要なので、健康状態にかかわらず申込みができます。ただし、引受基準緩和型医療保険も無選択型医療保険も、加入しやすい代わりに保険料が割高で保障が制限される等の注意点があるので、しっかりと内容を検討することが大切です。
また、医療保険で備えておきたいのは糖尿病に関する保障だけではありません。糖尿病等の持病があると、ついその病気のことばかり心配になってしまいますが、糖尿病以外の病気やケガによる入院・手術のリスクに備えることも大切です。
さまざまなリスクに医療保険で備えたい場合は、早めに保険の専門家に相談しましょう。「ほけんの窓口」では、医療保険のプランに関する質問やお見積もり等が、何度でも無料で相談できます。糖尿病でも入れる保険を探す場合も、ぜひ「ほけんの窓口」へご相談ください。
監修者プロフィール
黒川 一美
日本FP協会 AFP認定者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学院修了後、IT企業や通信事業者のセールスエンジニア兼企画職として働く。出産を機に退職し、自分に合ったお金との向き合い方を見つけるため、FP資格を取得。現在は3人の子育てをしながら、多角的な視点からアドバイスができるFPを目指して活動中。FPサテライト株式会社所属FP。