生命保険と医療保険の違いとは?どちらに加入すべきか解説
保険に加入しようと考えた時、生命保険と医療保険の違いがわからず、迷う人も多いのではないでしょうか。生命保険と医療保険は、加入する目的や備えられるリスク、受けられる保障内容等が異なります。保険に加入する際には内容の違いを知り、自分に合った商品を選ぶことが大切です。
この記事では、「生命保険」は死亡保険のこと、「医療保険」は民間の医療保険のこととして、生命保険と医療保険の違いや種類の他、どちらに加入すべきか検討する際のポイントについても解説します。
生命保険と医療保険の違い
生命保険と医療保険の大きな違いは、保障内容です。生命保険は、被保険者が死亡または保険会社所定の高度障害状態になった時に、あらかじめ指定した受取人に対して、死亡保険金や高度障害保険金が支払われます。
一方、医療保険は、被保険者が病気やケガで入院したり、所定の手術や治療を受けたりした際に、給付金を受取ることができる保険です。なお、医療保険と類似の性格を有するものとして公的医療保険制度(一般的には健康保険と呼ばれる)もありますが、この記事では医療保険の記載は民間の医療保険のこととして解説していきます。
なお、生命保険も、一般的には死亡保険や医療保険、介護保険、学資保険等、さまざまな「もしものこと」が起こった際に保険金や給付金を受取れる保険全般を指しますが、この記事では前述のとおり、生命保険とは死亡保険のこととして解説していきます。
生命保険と医療保険の主な違いは、以下のとおりです。
■生命保険と医療保険の主な違い
保険の種類 | 保険の内容 | 保険金の支払われ方 |
---|---|---|
生命保険 | 被保険者が死亡または保険会社所定の高度障害状態になった場合に、保険金が支払われる | 基本は保険金が一括で支払われる(毎月受取れるタイプもある) |
医療保険 | 病気やケガで入院、手術等をした時に給付金が支払われる | 商品によって異なるが、日数や回数に応じて給付金が支払われる |
生命保険の種類
生命保険の中にも、さまざまな種類があります。どの保険も「死亡または保険会社所定の高度障害状態になった時に保険金が支払われる」という点では共通していますが、それぞれ特徴や加入の目的等が異なります。
終身保険
終身保険は、保障が一生涯続く生命保険です。被保険者が死亡または保険会社所定の高度障害状態になった時には、加入時に定めた保険金が支払われます。満期がなく、途中で解約した場合は解約返戻金を受取ることができるため、貯蓄性のある点が特徴です。解約時期や契約内容によっては、保険料払込期間の終了後等に、払込保険料の総額を上回る解約返戻金を受取れることもあります。
定期保険
定期保険は、保険期間があらかじめ決まっている、掛け捨て型の生命保険です。「10年間」や「60歳まで」というように契約時に保険期間を定め、その期間中に被保険者が死亡または保険会社所定の高度障害状態になった場合に保険金が支払われます。万が一の事態が起こらないまま満期を迎えた場合でも、満期保険金等はなく、そのまま契約終了となります。途中で解約しても、基本的には解約返戻金はありません。そのため、終身保険に比べて、保障内容が同程度でも保険料は割安です。
収入保障保険
収入保障保険は定期保険の一種で、掛け捨て型の生命保険です。収入保障保険と定期保険の違いは、保険金の支払われ方です。収入保障保険では、被保険者が死亡または保険会社所定の高度障害状態になった時に、年金のように、満期まで毎月決まった額の保険金が支払われます。支払われる保険金の額は毎月一定で、保険期間の経過とともに受取る期間が短くなるので、受取総額は徐々に減少していきます。定期保険と同様に、基本的に満期保険金や解約返戻金はありません。
養老保険
養老保険は、死亡保障と貯蓄の両方を備えた生命保険です。「10年間」や「60歳まで」というように契約時に保険期間を定め、保険期間中に被保険者が死亡または保険会社所定の高度障害状態になった場合は、保険金が支払われます。また、何事もなく保険期間満了を迎えた場合は、死亡保険金と同額の満期保険金が支払われます。なお、保障内容が同程度の定期保険と比べると、保険料は割高になります。
医療保険の種類
医療保険は、民間の保険会社が提供し個人が任意で加入する保険ですが、その解説に入る前に、公的医療保険制度(健康保険)との違いについても確認しておきましょう。
公的医療保険制度
日本では「国民皆保険制度」を採用しているため、すべての人が、原則として何らかの公的医療保険制度に加入しなくてはなりません。公的医療保険制度に加入していると、病気やケガで医療機関を受診した時、窓口で負担する医療費が年齢や収入に応じて1~3割になります。また、医療費の自己負担額が所定の金額(自己負担限度額)を超えた時には、高額療養費制度を利用して払戻しを受けることも可能です。ただし、公的医療保険制度の適用外の医療費については、全額が自己負担となります。なお、子どもの医療費については自治体によって助成制度があります。
医療保険
医療保険は、公的医療保険制度ではまかないきれない、病気やケガによる経済的な負担をカバーするために、個人が任意で加入する保険です。医療保険では、病気やケガで入院したり、所定の手術や治療を受けたりした際に、入院給付金や手術給付金、通院給付金等を受取ることができます。また、主契約に加えて、特定の病気や通院に対する特約を付けることも可能です。
医療保険に加入すると、先進医療をはじめとする保険適用外の治療費や、入院中の食事代、差額ベッド代等、公的医療保険制度でカバーできない費用負担に備えることができます。
医療保険については、以下の記事をご覧ください。
医療保険とは?公的医療保険制度と民間の医療保険の違いと種類、仕組みを解説
医療保険の保険期間別の種類
医療保険は、保障される期間によって、終身医療保険と定期医療保険に分かれます。それぞれの違いは、以下のとおりです。
終身医療保険
終身医療保険は、保障が一生涯続く医療保険です。契約内容を途中で変更しない限り、保険料が変わることはありません。
終身医療保険の支払い方法には、一生涯にわたって保険料を支払う終身払と、一定期間で支払いが終了する短期払の2種類があります。終身払のほうが毎月の保険料は割安ですが、短期払は払込期間を終えた後、保険料負担がなく保障を継続できるメリットがあります。
定期医療保険
定期医療保険は、あらかじめ定められた一定期間のみ保障される、掛け捨て型の医療保険です。保障期間は、10年や15年、または何歳まで、というように契約時に定められています。加入時の年齢が若いほど保険料を抑えられますが、更新時にはその時の年齢で保険料が再計算されるため、更新するごとに保険料は上がります。
医療保険の保障の種類
医療保険は、保障内容によってもいくつかの種類に分けられます。医療保険に加入する際には、自分の目的に合った保障内容を選ぶことが大切です。
一般的な医療保険
一般的な医療保険は、病気やケガのリスクに幅広く備えることができるのが特徴です。病気やケガで入院したり、所定の手術を受けたりした時に給付金が支払われます。入院1日あたりの給付金額を契約時に設定しますが、給付金が支払われる日数には保険商品ごとに限度があるため注意が必要です。また、手術給付金の対象になる手術は、保険会社や保険商品によって異なります。
がん保険・三大疾病保険(特定疾病保険)
がん保険や三大疾病保険(特定疾病保険)は、特定の病気に対して重点的な保障を受けられる医療保険です。がん保険は、その名のとおり、がんの保障に特化した保険で、がんと診断された時やがんによる入院・手術をした時、がんの通院治療を受けた時に給付金が支払われます。また、三大疾病保険(特定疾病保険)は、三大疾病と呼ばれるがん(悪性新生物)・心疾患・脳血管疾患のリスクに備える保険です。三大疾病にかかり、被保険者が死亡または保険会社所定の高度障害状態になった時に、一時金として特定疾病保険金を受取ることができます。
女性専用の医療保険
女性専用の医療保険は、女性特有の病気に対して、重点的な保障が用意されている保険です。一般的な医療保険の対象となる病気やケガに加えて、子宮筋腫や子宮内膜症、乳がん、子宮がん(子宮頸がん、子宮体がん)、卵巣がんの病気に対する保障が上乗せされます。また、妊娠や分娩における合併症に対応している商品もあります。
引受基準緩和型・無選択型医療保険
引受基準緩和型は、持病や既往歴がある人でも加入しやすいように、加入条件(引受基準)を緩和した医療保険です。さらに無選択型医療保険は、持病や既往歴の告知も必要なく、健康状態にかかわらず加入できる医療保険となっています。加入にあたって必要な告知事項が少ない、もしくはないため、健康状態によって一般的な医療保険への加入が難しい人でも、比較的申込みしやすいのが特徴です。ただし、加入のハードルが低いぶん、一般の医療保険に比べて保険料は割高であり、免責事項等が多い場合があります。
生命保険と医療保険のどちらに加入すべき?
生命保険と医療保険は、どちらか一方を選ばなければいけないというわけではなく、両方に加入しても問題ありません。ただ、保険料の支払いの都合等で、どちらかを優先したいと考えている人もいるでしょう。
生命保険と医療保険のどちらに加入すべきか迷ったら、以下のポイントを参考にしてみてください。
■生命保険と医療保険をおすすめする人
生命保険をおすすめする人 | 医療保険をおすすめする人 |
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生命保険に加入したほうがよい人
生命保険の加入を優先したほうがよいのは、家計を支えている人、養う家族がいる人です。一家の働き手に万が一のことがあると、のこされた家族は生活費に困ってしまうことになります。特に、結婚や妊娠・出産で家族が増えた時は、生命保険の加入を検討すべきタイミングといえます。自分に万が一のことがあっても、家族の生活費や教育費等のお金をのこせるように、生命保険で備えておきましょう。
また、保障と貯蓄を両立させたい人には、終身保険等の貯蓄性のある生命保険がおすすめです。解約返戻金や満期保険金のある終身保険なら、保障と同時に、将来に向けた貯蓄もできるようになります。
その他、病気やケガの治療費をまかなえるだけの貯蓄がある場合も、医療保険より生命保険を優先するのがおすすめです。入院や手術の際の費用が自分でまかなえるようであれば、生命保険でより大きな保障を充実させることが可能です。
医療保険に加入したほうがよい人
医療保険への加入を優先的に検討したほうがよいのは、自身が病気やケガをした際の治療費が心配な人です。貯蓄が少ない場合や、病気・ケガで仕事を休むと収入減少につながり、治療費の支払いに不安があるという場合は、医療保険への加入がおすすめといえます。
また、老後の病気やケガのリスクに備え、健康なうちから医療保険への加入を検討するのもよいでしょう。年齢が若いうちに加入をしたほうが、保険料を抑えることもできます。
自分の目的に合った保険を検討しよう
生命保険と医療保険は、加入の目的や保障内容等が異なります。さまざまなリスクにしっかりと備え、自分や家族に必要な保険を選ぶことが大切です。
ただ、生命保険も医療保険も多くの種類があり、どれを選べばよいか悩んでしまう人もいるかもしれません。保険選びに迷った際には、保険の専門家に相談するのがおすすめです。「ほけんの窓口」では、保険のプランに関する質問やお見積もりが、何度でも無料でご利用いただけます。生命保険や医療保険の加入を検討する際は、ぜひ「ほけんの窓口」へご相談ください。
監修者プロフィール
黒川 一美
日本FP協会 AFP認定者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学院修了後、IT企業や通信事業者のセールスエンジニア兼企画職として働く。出産を機に退職し、自分に合ったお金との向き合い方を見つけるため、FP資格を取得。現在は3人の子育てをしながら、多角的な視点からアドバイスができるFPを目指して活動中。FPサテライト株式会社所属FP。