介護保険料は何歳から支払う?サービスを使える年齢や条件を解説

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一定以上の年齢になると、健康保険(公的医療保険)の保険料とあわせて、介護保険料を納めることになります。介護保険に何歳から加入するのかを知らないと、突然、健康保険料に介護保険料が上乗せされて驚くかもしれません。また、健康保険とは異なり、介護保険サービスを利用するのはほとんどの人が高齢になってからです。そのため、介護保険料を支払っていても、介護保険の仕組みについてはよくわからないという人も多いのではないでしょうか。

ここでは、介護保険の仕組みの他、何歳から介護保険料を支払うのか、何歳からどのような介護保険サービスを利用できるのか、といったことについて解説していきます。

介護保険とは?

介護保険は、社会全体で介護を支えることを目的とした公的保険制度です。

かつては、子どもや家族が、高齢になった親の介護を行うことが多くありましたが、少子高齢化が進み、介護を要する高齢者の増加や核家族化、介護離職等が社会問題になってきました。そこで、家族の負担を軽減し、介護を社会全体で支えるため、2000年に創設されたのが介護保険制度です。

介護保険の被保険者(加入者)は、40歳以上のすべての人です。このうち、65歳以上の人を第1号被保険者、40歳以上65歳未満の人を第2号被保険者といいます。介護保険は、介護保険の被保険者が納めた保険料と公費を財源として、介護が必要な人に対して介護保険サービスを提供します。被保険者に介護が必要になった時には、市区町村の各自治体に申請することで介護保険サービスを受けられるようになり、自己負担額は所得に応じて1~3割です。

介護保険料を支払う年齢

介護保険料の支払いが発生するのは、満40歳に達した時からです。介護保険は満40歳に達する時に自動的に加入することになり、生涯にわたって保険料を納める義務があります。

満40歳に達した時とは、「40歳の誕生日の前日」のことを指し、その日が属する月から保険料の支払いが発生します。例えば、誕生日が7月2日の人なら、前日は7月1日なので、40歳になる年の7月分から介護保険料の支払いが必要です。誕生日が7月1日の人の場合、その前日は6月30日なので、6月分から介護保険料の納付がスタートします。

介護保険への加入は法的に義務付けられているため、加入を拒否したり脱退したりすることはできません。保険料を納めないと延滞金等のペナルティが発生し、未納期間が長くなると、介護保険サービス費用の自己負担割合が高くなります。

介護保険料の納付方法

介護保険の保険料は、第1号被保険者(65歳以上)と第2号被保険者(40歳以上65歳未満)で納付方法が異なります。それぞれの納付方法を見てみましょう。

第1号被保険者(65歳以上)

第1号被保険者の介護保険料は、年金の受給額が年間18万円以上の人は各自治体が年金から天引きして徴収(特別徴収)します。会社員等で、それまで給与から介護保険料が天引きされていた人は、65歳以上からは給与からの控除はなくなり、年金から天引きされる形に切り替わります。特別な手続きを行う必要はありません。

年金の受給額が年間18万円未満の人の場合は、普通徴収での納付となります。普通徴収とは、各自治体からの納入通知書や口座振替により納付する方法です。

第2号被保険者(40歳以上65歳未満)

第2号被保険者の介護保険料は、公的医療保険の保険料といっしょに支払います。

協会けんぽや健康保険組合等、職場の健康保険に加入している会社員の場合は、毎月の給与から、健康保険料とセットで介護保険料が天引きされます。保険料は会社と折半となり、本人が負担する金額は介護保険料の半額です。また、自営業等で国民健康保険に加入している場合は、国民健康保険料に介護保険料が上乗せされるため、それまでどおりに国民健康保険料を納めれば、介護保険料も同時に納付できます。自営業等の介護保険料は全額自己負担です。

なお、第2号被保険者のうち、配偶者の健康保険の扶養に入っている人は、扶養者の介護保険料に含まれるので、原則として介護保険料を別途納める必要はありません。

介護保険料の納付額

介護保険料の納付額も、第1号被保険者(65歳以上)と第2号被保険者(40歳以上65歳未満)で算出方法が異なります。また、第2号被保険者の場合は、加入している公的医療保険の種類によっても納付額が変わってきます。それぞれの介護保険料の納付額について見てみましょう。

第1号被保険者(65歳以上)

第1号被保険者の介護保険料は、各自治体が定める基準額に、前年の所得に応じた割合を掛けて算出されます。保険料は所得に応じた負担になるよう、被保険者本人や家族の状況、所得額等によって9段階に分かれていることが標準的です。また、基準額は各自治体が3年に1回、条例で定めており、それぞれ金額が異なります。

第2号被保険者(40歳以上65歳未満)

第2号被保険者で会社員や公務員等、職場の健康保険(協会けんぽや健康保険組合等)に加入している場合は、給与や賞与の金額によって決まる標準報酬月額・標準賞与額に、保険料率を掛けて介護保険料が算出されます。保険料率は健康保険ごとに定められており、協会けんぽの場合は1.82%(2023年度)です。

一方、自営業等の国民健康保険加入者の場合は、前年の所得と世帯の被保険者の人数、資産等によって介護保険料が決まります。具体的な計算方法や保険料率は各自治体によって異なるため、居住地の自治体に確認しましょう。

介護保険サービスは何歳から利用できる?

介護保険サービスは、原則65歳以上の第1号被保険者が対象です。介護保険サービスを利用できる人の条件や内容をご紹介します。

第1号被保険者で要介護・要支援認定を受けた人

第1号被保険者(65歳以上)は、原因を問わずに要介護認定または要支援認定を受けた時に介護サービスを受けることができます。第1号被保険者になると、介護保険証(介護保険被保険者証)が発行されます。

ただし、介護保険証を持っているだけでは、介護保険サービスを利用することはできません。介護保険サービスを利用するには、各自治体の窓口で申請手続きを行い、要介護認定または要支援認定を受ける必要があります。要介護・要支援認定は、介護・支援の度合いに応じて、要支援1~2、要介護1~5の7段階に分かれています。

第2号被保険者で16種類の特定疾病を抱えている人

第2号被保険者(40歳以上65歳未満)で介護保険サービスを利用できるのは、以下に挙げる16種類の特定疾病を抱え、要介護認定を受けた場合に限られます。特定疾病のない人は、たとえ介護が必要な状態だったとしても、介護保険の適用対象外です。交通事故等のケガによって介護が必要になった場合等も、介護保険は利用できません。

■16種類の特定疾病

疾病内容

がん

医師により回復の見込みがないと判断されたがんや、末期がん

関節リウマチ

関節が炎症を起こして痛みやこわばり、腫れ等が生じ、進行すると関節の変形や機能障害を引き起こす病気

筋萎縮性側索硬化症(ALS)

筋肉を動かすための脳や脊髄の神経に障害が生じ、手足や喉、舌の筋肉や、呼吸に必要な筋肉が徐々にやせて力がなくなっていく病気

後縦靱帯骨化症

背骨の中を縦に走る後縦靭帯が骨化して脊髄が圧迫され、感覚障害や運動障害を引き起こす病気

骨折を伴う骨粗鬆症

骨粗鬆症とは、骨の強度が低下して、骨折しやすくなる骨の病気のこと。症状が進むと寝たきりにつながることもある

初老期における認知症

40歳以上65歳未満で見られる認知症。アルツハイマー型認知症や、脳血管性認知症等

進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病

脳の神経細胞が異常をきたし、手指の震えや筋肉の硬化、運動障害等が生じる進行性の疾患

脊髄小脳変性症

小脳の神経細胞が徐々に減少することにより、歩行が困難になったり、めまいの症状が現れたりする病気。脊髄にも異常が見られることがあるため、脊髄小脳変性症と呼ばれる

脊柱管狭窄症

脊柱管が狭くなって神経が圧迫され、腰や下半身に痛みやしびれ等が生じる病気

早老症

ウェルナー症候群等、実年齢よりも早く老化現象が見られる疾患の総称。若年性の白内障や、糖尿病、早発性の動脈硬化等を併発する

多系統萎縮症

小脳、大脳基底核、自律神経等、神経系の複数の系統がおかされる疾患。小脳や脳幹が萎縮して歩行時にふらついたりする小脳失調型、大脳基底核が障害されパーキンソン病と似た症状が現れる大脳基底核型、自律神経が障害され起立性低血圧や発汗障害等が見られる自律神経型がある

糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症

糖尿病を原因とする神経障害、腎症、網膜症といった合併症

脳血管疾患

脳梗塞や脳出血、くも膜下出血等、脳の血管のトラブルによって脳細胞が破壊される病気

閉塞性動脈硬化症

手足の血管に起こる動脈硬化。冷感、しびれ、歩行時の痛み等が生じ、進行すると手足に潰瘍ができて壊死することもある

慢性閉塞性肺疾患

肺気腫、慢性気管支炎等。少しの動作でも息切れや息苦しさを感じたり、慢性的に咳や痰が出たりする病気

両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

膝や股関節の軟骨がすり減って徐々に変形し、痛みや腫れ、機能障害等を引き起こす病気

特定疾病については、以下の記事をご覧ください。
特定疾病とは?公的介護保険における16種類の特定疾病と診断基準

介護保険サービスを利用する手順

介護保険サービスを利用するには、どのような手続きが必要なのでしょうか。ここからは、介護保険サービスを利用するための手順についてご紹介します。

1. 介護認定を申請

介護保険サービスの利用を希望する場合、まず、各自治体の窓口で「要介護(要支援)認定」の申請が必要です。申請後、各自治体の認定調査員が自宅や施設を訪問し、心身の状況について調査を行います。また、各自治体から、主治医(かかりつけ医)に意見書の作成を依頼します。

2. 要介護認定を受ける

介護認定を申請したら、判定を受けます。介護認定の判定は、一次判定と二次判定の2段階に分かれていて、一次判定では全国一律の基準で判定が行われます。一次判定は、各自治体による認定調査の結果と医師の意見書を基にコンピューターでの判定となるため、必ずしも実情に合った判定結果が出るとは限りません。二次判定では、各自治体の介護認定審査会が一次判定の結果を基に、本人を取り巻く状況等も含めてどれくらいの介護が必要かを判定します。

これらの審査を経て要介護度が決まり、原則として申請から30日以内に、各自治体から認定結果が通知されます。

3. ケアプランを作成

介護サービスを利用するにはケアプランが必要です。ケアプランを作成するのは、要介護1~5と認定された場合はケアマネジャー、要支援1~2の場合は地域包括支援センターです。ケアプランは、本人と家族の希望を考慮しながら、心身の状態や要介護度に合わせて作成されます。

4. 介護サービス事業者を選択して利用開始

実際に利用する介護サービス事業者を選択し、「介護保険被保険者証」と「介護保険負担割合証」を提示して、ケアプランに基づいた介護保険サービスを利用します。

介護保険サービスの内容

利用できる介護保険サービスには、さまざまな種類があります。代表的な介護保険サービスを以下にご紹介します。

在宅で介護を受ける訪問介護サービス

訪問介護サービスとは、在宅で介護を受ける介護サービスです。ホームヘルパーが自宅で介護や支援を行う訪問看護や、持ち運んだ浴槽で入浴介護を行う訪問入浴介護、自宅でリハビリを行う訪問リハビリ等のサービスを受けられます。その他、看護師等による訪問看護や、医師や歯科医師等による居宅療養管理指導といった介護サービスもあります。

住み慣れた地域で生活を続けるための地域密着型サービス

介護保険サービスの中には、自宅で生活しつつ、一時的に施設を利用する地域密着型サービスもあります。例えば、日帰りで施設を利用する通所介護(デイサービス)や通所リハビリ、施設に短期間宿泊する短期入所生活介護(ショートステイ)等です。

介護保険施設に入居する施設サービス

介護保険施設に入居する施設サービスも、介護保険サービスで利用できます。介護保険施設には「特別養護老人ホーム(特養)」「介護老人保健施設(老健)」「介護療養型医療施設」「介護医療院」の4種類があり、要介護度等に応じて入所できる施設が異なります。これらは公的施設なので民間施設より費用がかからず、その分、待機者も多いのが現状です。

公的な介護保険と民間の介護保険との違い

これまで解説してきた公的な介護保険の他に、民間の介護保険があります。民間の介護保険は生命保険会社等が提供する保険商品で、公的な介護保険を補完し、介護の経済的な負担を軽減することを目的としています。

民間の介護保険は個人が任意で加入するもので、公的な介護保険のように加入の義務や、年齢による制限等はありません。その他にも、公的な介護保険と民間の介護保険には、主に次のような違いがあります。

介護の保障を受けられる要件

公的な介護保険と民間の介護保険では、保障を受けられる要件が異なります。

公的な介護保険を利用するには、各自治体で要介護認定を受ける必要があります。それに対して、民間の介護保険は、保険会社所定の要件を満たした場合に保障を受けることが可能です。民間の介護保険の給付要件には、公的な介護保険の要介護認定に連動した「公的介護保険連動」と、各保険会社の定めた独自の基準による「保険会社独自要件」があり、一般的にはこのどちらかに該当すれば給付対象となります。

介護保険の給付

公的な介護保険と民間の介護保険の給付には、「現物」か「現金」かという違いがあります。

公的な介護保険は、介護保険サービスそのものを給付する「現物給付」が一般的です。要介護認定を受けた利用者は、利用した介護サービスにかかった費用の1~3割を負担し、限度額を超えてサービスを利用した場合は全額自己負担となります。

一方で、民間の介護保険は、給付要件を満たすと契約内容に応じた給付金を受取れる「現金給付」です。給付金は、一括で受取る一時金タイプと、定期的に受取れる年金タイプ、一時金と定期的な年金の両方が受取れるタイプがあります。

給付までの期間

公的な介護保険と民間の介護保険では、給付までの期間も異なります。公的な介護保険は、申請からサービス開始まで約1か月かかることが一般的です。それに対して、民間の介護保険では、保険会社に必要書類を提出し、所定の要件を満たしていることが確認されれば、給付金が支払われます。

介護による経済的な不安がある場合は、民間の介護保険を検討しよう

誰にでも起こりうる介護の負担を軽減するための制度が、公的な介護保険です。ただ、公的な介護保険は要介護認定を受けないと利用できず、支給限度額を超えて介護サービスを利用した場合は自己負担となります。そのため、公的な介護保険だけでは、介護に必要な費用をすべてまかないきれないかもしれません。

介護による経済的なリスクをカバーするなら、民間の介護保険を検討するのもひとつの方法です。

「ほけんの窓口」では、介護保険に関する質問や見積もり等が、何度でも無料で相談できます。介護保険について検討したい場合は、ぜひ「ほけんの窓口」へご相談ください。

監修者プロフィール

黒川 一美
日本FP協会 AFP認定者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学院修了後、IT企業や通信事業者のセールスエンジニア兼企画職として働く。出産を機に退職し、自分に合ったお金との向き合い方を見つけるため、FP資格を取得。現在は3人の子育てをしながら、多角的な視点からアドバイスができるFPを目指して活動中。FPサテライト株式会社所属FP。

黒川 一美
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