認知症で要介護になったらどうする?介護保険の必要性について解説

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高齢になると、認知症やそれに伴う介護費用が気になるものです。「自分や家族が認知症になったらどうしよう」と心配する人も少なくありません。認知症によって介護が必要になった際、公的介護保険や民間の介護保険を活用することで家族の負担を軽減できます。

ここでは、認知症により介護が必要になった時の公的介護保険の申請方法や保険料の自己負担割合、民間の介護保険や認知症保険の必要性について解説します。

認知症とは

認知症とは、認知機能の低下による記憶障害や失語等の症状があり、社会生活・日常生活に支障をきたしている状態のことです。代表的な認知症には、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症、レビー小体型認知症等があります。認知症は高齢になると急激に増える傾向がありますが、65歳未満でも認知症を発症する若年性認知症もあり、誰にでも起こりえる身近な病気のひとつといえます。

認知症について詳しく見ていきましょう。

認知症患者数の現状

高齢化が進む日本では、認知症患者数が増加しています。内閣府の「令和6年版高齢社会白書」によると、2022年の時点で65歳以上の認知症患者は443.2万人となり、高齢者の約8人に1人が認知症です。認知症の前段階と考えられている軽度認知障害(MCI)の数も加えると、高齢者の3~4人に1人の割合になります。また、2040年の認知症患者数は約584万人と推計されており、今後も認知症患者数は増え続けていく見込みです。

※出典:内閣府「令和6年版高齢社会白書」
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2024/zenbun/pdf/1s2s_02.pdf

軽度認知障害(MCI)とは?

軽度認知障害(MCI)とは、物忘れや記憶力の低下等は見られるものの、日常生活への影響はほぼなく、認知症とは診断されない状態のことです。MCIの人のうち、年間で10~15%が認知症に移行するといわれています。

なお、加齢によるもの忘れの場合は、もの忘れの自覚があり、忘れるのは体験したことの一部です。一方、認知症のもの忘れの場合、もの忘れの自覚はなく(初期を除く)、体験したすべてを忘れてしまいます。

認知症になったら公的介護保険の介護サービスを利用できる?

認知症になり、介護が必要な状態になった場合、公的介護保険の介護サービスを利用することが可能です。40歳~64歳の第2号被保険者の場合は、16種類の特定疾病が原因で介護が必要になった場合のみ介護サービスが利用可能ですが、認知症は特定疾病のうちの「初老期における認知症」に該当します。

ただし、介護サービスの利用にあたっては、居住地の自治体で要介護認定を受けなければなりません。認定が下りると、認定された要介護度に応じて介護サービスを受けられます。

公的介護サービスを利用できる年齢や条件については、以下の記事をご覧ください。
介護保険料は何歳から支払う?サービスを使える年齢や条件を解説

公的介護保険の介護サービスを利用する際の自己負担割合

公的介護保険の介護サービスを利用する際は、サービス費用の一部が自己負担になります。自己負担割合は所得や世帯人数に応じて異なり、以下の図のように判定されます。

40歳~64歳以下の人および一般所得層の65歳以上の人は1割負担、65歳以上で一定以上の所得がある人は2割負担、65歳以上で現役並みの所得者は3割負担です。

■利用者負担の判定の流れ

利用者負担の判定の流れ

※第2号被保険者(40歳以上65歳未満の人)、市区町村民税非課税の人、生活保護受給者は上記にかかわらず1割負担

また、公的介護保険には支給限度額があり、限度額を超えてサービスを利用した場合は全額自己負担となります。例えば、居宅サービス利用時の支給限度額は以下のとおりです。

■居宅サービス利用時の1か月あたりの利用限度額

要介護度1か月あたりの支給限度額
要支援15万320円
要支援210万5,310円
要介護116万7,650円
要介護219万7,050円
要介護327万480円
要介護430万9,380円
要介護536万2,170円

※出典:「介護事業所・生活関連情報検索」(厚生労働省)
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html)を基に作成

公的介護保険の自己負担割合については、以下の記事をご覧ください。
公的介護保険の自己負担割合はどのくらい?負担額や支給限度額を解説

民間の介護保険や認知症保険の必要性

公的介護保険は、介護が必要になった時の費用負担を軽減するための制度ですが、原則、介護サービス等の現物支給になります。また、公的介護保険の介護サービスを利用する際には、所得等に応じて1~3割の自己負担が発生する上、支給限度額を超えた分の金額は、全額自己負担です。そのため、認知症による介護費用に不安を抱える人も少なくありません。

そこで、検討したいのが、民間の介護保険です。民間の介護保険は、保険会社等が提供する保険商品で、公的介護保険を補完し、介護の経済的な負担を軽減することを目的としています。認知症と診断された時や認知症と診断されて一定の要介護状態になった時に、給付金を受取ることが可能です。

民間の介護保険のなかには、認知症に特化した認知症保険と呼ばれる保険商品があり、軽度認知障害(MCI)も保障対象とする商品も多くあります。一般的な介護保険では、軽度認知障害(MCI)は保障対象外になるケースが多いですが、特約を付帯することで保障対象となる商品もあります。

ただし、民間の介護保険や認知症保険に加入する際は、健康状態を告知する必要があり、健康状態によっては加入できない可能性があることに注意しましょう。民間の介護保険や認知症保険への加入を検討するなら、健康なうちに加入することをおすすめします。

認知症による介護は民間の介護保険や認知症保険を活用して備えよう

認知症で介護が必要になった場合は、公的介護保険が利用できます。ただし、公的介護保険を利用しても、自己負担がゼロになるわけではありません。公的介護保険だけでは経済的な不安がある場合は、民間の介護保険を活用するのもひとつの方法です。また、民間の介護保険のなかには、認知症と診断された時や、認知症で介護が必要な状態になった時に給付金が受取れる認知症保険といった商品もあります。

民間の介護保険や認知症保険への加入に迷ったら、保険の専門家に相談するのがおすすめです。

「ほけんの窓口」では、民間の介護保険や認知症保険のプランや見積もり等が、何度でも無料で相談できます。民間の介護保険や認知症保険への加入や見直しを検討する際には、ぜひ「ほけんの窓口」にご相談ください。

認知症における介護保険の利用についてよくある質問

認知症における介護保険の利用について、よく聞かれる疑問をまとめました。それぞれの質問について解説していますので、参考にしてください。

軽度認知障害(MCI)は認知症ですか?
軽度認知障害(MCI)は認知症ではありません。
認知症は、認知機能の低下によって社会生活・日常生活に支障をきたしている状態を指すのに対し、軽度認知障害(MCI)は、認知機能が低下しているものの日常生活への影響はほぼない状態です。軽度認知障害(MCI)の人は、1年で約10~15%の人が認知症に移行するといわれています。
認知症になったら公的介護保険の介護サービスは利用できますか?
認知症になり介護が必要になった場合、公的介護保険の介護サービスを利用できます。
ただし、介護サービスの利用にあたっては、自治体への申請が必要となり、要介護認定を受けなければなりません。認定が下りると、認定された要介護度に応じて介護サービスを受けられます。
公的介護保険の介護サービスを利用する際の自己負担はどのくらいですか?
公的介護保険の利用者の自己負担割合は、所得に応じて1~3割です。
公的介護保険の介護サービスを利用する際の自己負担割合は、所得によって異なり、介護サービス費用の1~3割となります。40歳~64歳以下の人および一般所得層の65歳以上の人は1割、65歳以上で一定以上の所得がある人は2割、65歳以上で現役並みの所得者は3割です。なお、要介護度別に設定されている支給限度額を超えた分の利用については、全額自己負担となります。
民間の介護保険や認知症保険への加入は必要ですか?
介護における経済的な負担をカバーしたい場合は、民間の介護保険や認知症保険への加入をおすすめします。
民間の介護保険の目的は、公的介護保険のサービスを補完して介護の経済的な負担を軽減することです。そのため、民間の介護保険への必要性は各個人の状況によって異なります。公的介護保険だけでは経済的な負担が心配という場合は、民間の介護保険や、認知症に特化した認知症保険への加入をおすすめします。

監修者プロフィール

原 絢子
日本FP協会 AFP認定者、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

自分で保険の見直しを行ったのをきっかけに、お金の知識を身につけることの大切さを実感し、ファイナンシャルプランナーとして活動を始める。モットーは「自分のお金を他人任せにしない」。一人でも多くの人がお金を味方につけて、自分の思い描く人生を歩んでほしいと、マネーリテラシーの重要性を精力的に発信している。FPサテライト株式会社所属FP。

原 絢子
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