死亡保険は終身と定期、養老のどれを選ぶ?特徴や違いを解説
死亡保険は、被保険者に万が一のことがあった場合、のこされた家族が経済的に困窮しないように備えるための保険です。被保険者が死亡または保険会社所定の高度障害状態になった時に、保険金が支払われます。
死亡保険には、大きく終身保険と定期保険があります。その他、死亡保障があるという点で、被保険者の死亡時等にも、あるいは保険期間の満了時に生存していても保険金が支払われる生死混合保険があり、その代表的なものとして養老保険もあります。保険期間や保険料、解約返戻金の有無で違いがあるので、それぞれの特徴を知った上で、自分に合った保険を選ぶことが大切です。
ここからは、終身保険と定期保険に養老保険を加えて「死亡保険」と表現し、その特徴やそれぞれの保険が向いている人について解説します。
死亡保険とはどのような保険か
死亡保険とは、被保険者が死亡または保険会社所定の高度障害状態になった時に、あらかじめ指定した受取人に対して保険金が支払われる生命保険です。
家計を支えている人に万が一のことがあった場合、のこされた家族は生活が立ち行かなくなってしまう場合もあります。こうしたリスクに備えて、必要なお金を預貯金で準備しようと思っても、十分な額を確保するには時間がかかります。
その点、死亡保険に加入すれば、加入してすぐに万が一のことがあったとしても、あらかじめ指定した保険金を受取ることができます。死亡保険は、時間をかけずに大きな保障を準備することができるのです。
死亡保険の種類
終身保険と定期保険、養老保険それぞれの特徴をまとめると下記の表のようになります。ここからは、終身保険と定期保険、養老保険の特徴について解説します。
■死亡保険の種類と特徴
終身保険 | 定期保険 | 養老保険 | |
---|---|---|---|
保険期間 | 一生涯保障が継続 | 一定期間内での保障 ※更新可能な商品もある | 一定期間内での保障 |
保険料の払込方法 | 終身払、有期払、一時払 | 有期払 | 有期払、一時払 |
満期保険金 | なし | なし | あり |
解約返戻金 | あり | なし(あってもごくわずか) | あり |
終身保険の特徴
終身保険は、一生涯保障が続く死亡保険です。途中で解約した場合は、保険料を支払った期間等に応じた解約返戻金を受取ることができます。そのため、死亡のリスクに備える他、老後の資金づくり等の貯蓄目的でも利用されます。
また、加入時の保険料が原則変わることはなく、同じ保険料で一生涯にわたって保障を受けられます。ただし、終身保険は保障だけでなく貯蓄性も備えた保険のため、同じ保障内容であれば、保険料は定期保険と比べると割高です。
なお、途中解約した場合に受取る解約返戻金は、払込金額や解約時期に応じて金額が変わりますが、払込保険料の総額より少なくなることが多いため注意が必要です。また、満期や更新がなく保障が一生涯続くので、保険を見直すタイミングがないことや、解約のタイミングによっては解約返戻金が低くなるため、終身保険は見直しが難しいという側面もあります。
終身保険・貯蓄型保険については、下記の記事をご覧ください。
終身保険のメリットとデメリットは?必要性を種類・目的別に解説
貯蓄型保険とは?掛け捨て型保険との違いとメリット・デメリット
定期保険の特徴
定期保険とは、保障期間が決まっている保険のことです。契約時に定めた期間内に死亡または保険会社所定の高度障害状態になった時に、保険金が支払われます。基本的に、途中解約時の解約返戻金や期間満了時の満期保険金がなく、支払った保険料が戻ってこない掛け捨てタイプの保険です。
保険期間の設定方法により、「年満了」と「歳満了」の2種類があります。年満了は、保険期間を10年間、15年間といったように年数で設定するタイプ、歳満了は、60歳まで、70歳までといったように年齢で設定するタイプです。一般的に、年満了タイプは更新可能ですが、歳満了タイプは更新ができません。
保障内容が同じであれば、定期保険は終身保険に比べると保険料が割安です。そのため、保険料を抑えつつ手厚い保障を確保することができます。また、満期や更新があるので、保険の見直しがしやすいというメリットもあります。
一方で、更新の際は以前に契約した時より年齢が上がっているため、保障内容が同じでも、保険料は値上がりすることが一般的です。また、商品によっては、契約期間や更新できる年齢に上限を設けている場合があるため、更新できない可能性もあります。
養老保険の特徴
養老保険は、死亡保障と貯蓄の両方を備えた保険です。契約時に定めた保険期間中に被保険者が死亡または保険会社所定の高度障害状態になった場合には、死亡保険金または高度障害保険金が支払われます。また、何事もなく保険期間が終了した場合には、死亡保険金と同額の満期保険金が支払われます。ただし、同程度の死亡保障がある定期保険と比べると、割高な保険料となるのが一般的です。
なお、養老保険の保険期間はあらかじめ決まっており、「10年」「15年」等、期間が設定されている年満了と、「60歳まで」「70歳まで」等、年齢で区切る歳満了の2種類があります。
終身保険が向いている人
終身保険や定期保険、養老保険のどれが合っているかは、何を求めるかによって変わるため、一概にはいえません。同じ人でも、家族構成やライフステージの変化により、必要な保障が変わってくるからです。
終身保険が向いているのは、主に下記のような人です。
一生涯の保障を確保しつつ、将来の資金を準備したい人
終身保険は、死亡保障と貯蓄性を備えているため、一生涯の保障を確保しつつ将来の資金を準備したい人に向いています。被保険者が死亡した場合だけでなく、解約した場合には解約返戻金が支払われるため、資産形成としても活用することができます。
自分が亡くなった後、家族に確実に財産をのこしたい人
終身保険は、一生涯の保障であるため、死亡保険金を確実に家族にのこすことができます。そのため、葬式代や相続税の納税資金等、自分が亡くなった後、確実に財産をのこしたい人がいる場合、終身保険が役に立ちます。
なお、死亡保険金は相続税の対象になりますが、法定相続人1人あたり500万円までは非課税です。この非課税枠を利用して、終身保険は相続税対策としても活用できます。
定期保険が向いている人
定期保険は、保障期間が決まっている、貯蓄性がないため保険料の負担が軽くなるといった特徴があります。定期保険が向いているのは、主に下記のような人です。
一定期間だけ手厚い保障が欲しい人
子どもが独立するまでのあいだ等、一定の期間だけ手厚い保障が欲しい人は定期保険が向いています。例えば、子育て中は通常の生活費に加えて子どもの教育費等も考慮した大きな保障が必要になりますが、子どもが独立した後は、それほど大きな保障は必要なくなるでしょう。このような場合は、一定の期間だけ大きな保障を確保できる定期保険が合っているといえます。
また、定期保険には満期があるため、更新するタイミングでライフステージの変化等に合わせて保険の内容を見直しやすいというメリットもあります。
保険料をできるだけ抑えたい人
教育費や生活費との兼ね合いで月々の保険料を抑えたい人も、定期保険が合っているといえます。定期保険は、同じ保障内容の終身保険に比べて保険料が割安です。例えば、子育て世代は教育費や生活費の負担が重く、保険料をできるだけ抑えたいと考えるでしょう。定期保険であれば、同じ保障内容の終身保険に比べて安価な保険料で備えることができます。保険料を抑えて、その分を貯蓄や投資に回すことも考えられます。
養老保険が向いている人
養老保険は死亡保障と貯蓄を備えた保険です。終身保険とも定期保険とも異なる特徴があります。養老保険が向いている人は、主に下記のような人です。
計画的な資産形成を行いたい人
養老保険は貯蓄性が高く、保険期間を比較的自由に設定できるため、ライフイベントに合わせて計画的な資産形成を行いたい人に向いています。例えば、子どもの大学進学のタイミングになる18歳に合わせて教育資金を用意したり、定年退職の時期に合わせて老後の資金を確保したりすることが可能です。目的に応じて満期保険金の額も設定できるため、無理なく資産形成ができるといえるでしょう。
保険期間中の万が一にも備えたい人
養老保険は、資産形成を行いながら死亡保障にも備えたい人に向いています。何事もなく保険期間が終了したら満期保険金が受取れるだけでなく、保険期間中に被保険者が死亡または保険会社所定の高度障害状態になった場合には死亡保険金または高度障害保険金が支払われます。
自分に合った死亡保険を検討しよう
死亡保険に加入していれば、被保険者に万が一のことが起こっても、のこされた家族は手厚い保障を受けられます。終身保険、定期保険、養老保険それぞれの特徴を踏まえた上で自分に合った死亡保険を見つけることが大切です。例えば、「子どもが独立するまでの期間」の保障を手厚くしたいなら定期保険、一生涯の保障を確保しつつ将来の資金を準備したいなら終身保険、ライフイベントに合わせて計画的に資産形成も行いたいなら養老保険が向いています。
どの保険商品が適しているかは、個々のニーズによって変わるため、迷ったらまずは保険の専門家に相談してみるのがおすすめです。死亡保険の加入を検討する際には、「ほけんの窓口」にご相談ください。
監修者プロフィール
原 絢子
日本FP協会 AFP認定者、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
自分で保険の見直しを行ったのをきっかけに、お金の知識を身につけることの大切さを実感し、ファイナンシャルプランナーとして活動を始める。モットーは「自分のお金を他人任せにしない」。一人でも多くの人がお金を味方につけて、自分の思い描く人生を歩んでほしいと、マネーリテラシーの重要性を精力的に発信している。FPサテライト株式会社所属FP。