自動車保険の種類とは?
自賠責保険と任意保険の違いや補償範囲を解説
自賠責保険と任意保険の違いや補償範囲を解説
自動車保険には、法律で加入が義務付けられている自賠責保険(強制保険)と、車の所有者や運転者が任意で加入する任意保険の、大きく分けて2つの種類があります。また、任意の自動車保険も、その補償内容でいくつかの種類に分けられます。
「自動車保険は自賠責保険だけで十分では?」と考える人もいるかもしれませんが、自動車の事故は、任意保険でなければカバーできない損害が発生することが多々あります。万が一の時に後悔することのないように、自動車保険の種類を正しく把握し、必要な保険に加入することが大切です。
ここでは、自賠責保険と任意保険の違いやそれぞれの特徴、補償範囲等について解説します。
自動車保険には大きく分けて2つの種類がある
自動車保険とは、自動車事故等によって生じる損害に備えるための保険です。自動車保険には、「自動車損害賠償責任保険(強制保険)」と「任意保険」の大きく分けて2種類があります。まずは、2つの違いについて、確認していきましょう。
■自動車保険の種類
自賠責保険
自賠責保険は、自動車損害賠償保障法にもとづき、すべての自動車に対し加入することが義務付けられている保険で、バイクや原付も含まれます。加入の義務があることから「強制保険」とも呼ばれます。自賠責保険に加入していない自動車やバイクを運転することはできません。そのため、ほとんどの場合、自動車等の購入と同時に自賠責保険の加入手続きを行います。
自賠責保険は、交通事故による被害者の救済を目的とする保険です。保険金が支払われるのは、他人を死傷させる等の人身事故の損害賠償に限られ、支払保険金には限度額が定められています。
任意保険
任意保険は、自賠責保険ではカバーできない範囲に備えるために、自動車の所有者や運転者が任意で加入する保険です。自賠責保険と区別する意味で「任意保険」と呼ばれます。
前述のとおり、自賠責保険では人身事故による相手への損害しか補償されません。対して任意保険には、対人賠償保険、対物賠償保険、車両保険、人身傷害保険等さまざまな補償内容があり、自賠責保険の補償の範囲を超えた、幅広いリスクに備えることができます。
自賠責保険の特徴
自賠責保険は人(被害者)のための保険、任意保険は相手だけでなく自分や物への補償もできる保険ですが、それぞれの補償の範囲や特徴等をさらに詳しく解説していきます。まずは自賠責保険の特徴を見ていきましょう。
人身事故による損害のみ補償される
自賠責保険で補償されるのは、自動車による事故で他人を死亡させたりケガをさせたりした「人身事故」の損害のみです。また、保険金は相手への損害賠償に対して支払われるため、運転手自身のケガは対象外となります。その他、物損事故や自損事故、自動車の修理代等も補償の対象にはなりません。
自賠責保険には支払限度額がある
自賠責保険には、被害者1人につき支払われる保険金に限度額があります。1つの事故で被害者が複数人いる場合は、保険金が分割されるわけではなく、1人ずつにそれぞれ限度額が適用されます。
支払限度額は、傷害、後遺障害、死亡について、それぞれ以下のように定められています。
<被害者1人あたりの限度額>
- 傷害による損害:120万円
- 後遺障害による損害:等級に応じて75万~4,000万円(※)
- 死亡による損害:3,000万円
(※)・神経系統・精神・胸腹部臓器に著しい障害を残して介護が必要な場合
常時介護のとき…最高4,000万円
随時介護のとき…最高3,000万円
・上記以外の場合、後遺障害の程度により
第1級:最高3,000万円~
第14級:最高75万円
・死亡するまでの傷害による損害:120万円
被害者が損害賠償額を直接請求できる
自賠責保険には、加害者の加入している保険会社に被害者が損害賠償額を直接請求できる「被害者請求」という仕組みがあります。この場合は、保険金ではなく損害賠償額といいます。加害者が任意保険に加入していなかったり、金額面の折り合いがつかず示談が成立しなかったりすると、保険金の請求ができないという場合がありますが、被害者請求はそのような事態において被害者を保護するための制度です。
仮渡金(かりわたしきん)制度がある
自賠責保険には、損害賠償額の確定前に保険金の前払いを請求できる「仮渡金(かりわたしきん)」という制度があります。損害賠償額の確定に時間がかかる場合、治療費や生活費といった当面必要な出費のために、被害者は加害者の加入する保険会社に仮渡金を請求できます。
仮渡金の金額は、死亡の場合290万円、傷害の場合は程度に応じて5万円・20万円・40万円の3段階に分かれています。
被害者に重大な過失があった場合にのみ減額される
自賠責保険は被害者の保護を目的としているため、一般の損害賠償のように厳格な過失相殺は適用されません。自賠責保険で損害賠償額から減額されるのは、被害者に重大な過失がある時のみです。具体的には、被害者の過失割合が7割以上の場合に限り、その過失の程度に応じて損害賠償額が減額されます。これを重過失減額といいます。
任意保険の特徴
では次に、任意保険の特徴について見ていきましょう。任意保険は自賠責保険とは異なり、相手や自分、同乗者、自動車や物等への補償が用意されています。
任意保険である自動車保険と強制保険である自賠責保険の主な違いは、以下のとおりです。
■自賠責保険(強制保険)と自動車保険(任意保険)の補償範囲の違い
相手への補償 | 自分への補償 | |||
---|---|---|---|---|
死傷 | 車・物 | 死傷 | 車 | |
自賠責保険 (強制保険) | △傷害120万円まで 死亡3,000万円まで 後遺障害4,000万円までの上限金額あり | ✕補償なし | ✕補償なし | ✕補償なし |
自動車保険 (任意保険) | ◯対人賠償保険 | ◯対物賠償保険 | ◯人身傷害保険 搭乗者傷害保険等 | ◯車両保険 |
大きく分けて4つの保険
任意保険にはさまざまな補償があり、必要な補償を任意で組み合わせて契約することができます。任意保険の基本的な補償には「対人賠償保険」「対物賠償保険」「車両保険」「人身傷害保険・搭乗者傷害保険」という大きく分けて4つの種類があります。
基本の4つの補償のうち、対人賠償保険と対物賠償保険は事故相手への補償、車両保険は自分の車への補償、人身傷害保険・搭乗者傷害保険は運転者や同乗者への補償です。これらの補償を組み合わせることで、自賠責保険では補償されない範囲をカバーすることが可能になります。
・対人賠償保険
対人賠償保険は、自動車の事故によって相手を死傷させ、法律上の損害賠償責任を負った場合に、自賠責保険で支払われる限度額を超える損害賠償額に対して保険金が支払われる保険です。自動車事故で相手が亡くなったり、ケガで後遺症がのこったりすると、非常に高額な賠償が発生します。もし任意の保険に加入していないと、自賠責保険の補償額を超えた金額は、すべて加害者本人が支払わなければなりません。そのようなリスクに備えて、対人賠償保険の保険金額は無制限とすることが一般的です。
・対物賠償保険
対物賠償保険は、自動車の事故によって、相手の車や建物、ガードレール等、他人の財物に与えた損害に対して、法律上の損害賠償責任を負った場合に保険金が支払われる保険です。また、自動車の運転を誤って店舗に突っ込んでしまった場合等の、店の休業損害も補償対象となります。ただし、あくまでも相手方の物が対象になるため、事故によって自宅の車庫や塀等を壊したような時は適用されません。対物賠償保険も保険金額は無制限とすることが一般的です。
・車両保険
車両保険は、事故等によって損害を受けた、自分の車の修理費用等を補償する保険です。相手のある交通事故の他、盗難やいたずら、自然災害(地震・噴火・津波を除く)等によって被った損害についても補償されます。車の損傷が大きく修理が難しい場合は、車両保険の保険金を買い換え費用にあてることも可能です。
一般的に、補償範囲が広い「一般型」と、保険料を抑えられる代わりに補償範囲が限定される「限定型(エコノミー型)」の2種類があります。
・人身傷害保険・搭乗者傷害保険
人身傷害保険は、自動車事故によって運転者自身や同乗者が死傷した場合の損害額を補償する保険です。交通事故でケガをした場合の治療費等が補償されます。相手がいる事故・単独事故を問わず、搭乗中の人を対象に、保険金額の範囲内で実際の損害額が支払われる人身傷害保険の他に、死亡保険金やケガの程度に応じて決められた保険金等が支払われる搭乗者傷害保険があります。
自分で補償内容を選択する
補償の種類に加えて、補償の範囲や手厚さについて自分で選べる点も、任意保険の特徴です。例えば、対人賠償保険や対物賠償保険は保険金額を無制限とすることができます。また、「新車なので車両保険をつけて、補償は範囲の広い一般型にしたい」「自分や同乗者への補償を手厚くしたいので人身傷害保険の保険金を無制限にしたい」等、自分の希望に応じて選択が可能です。
さらに、任意保険には、オプションとして追加できるさまざまな特約があります。代表的なものに、弁護士に委任した場合の費用を補償する特約や、原付での事故も自動車と同じ補償範囲が適用される特約、日常生活における賠償事故に備える特約等があり、自分に必要な補償を選んでカスタマイズすることが可能です。
自動車保険加入の義務と任意の範囲を知って適切に選ぼう
自動車保険には、法律で加入が義務付けられている「自賠責保険」と、任意で加入できる「任意保険」があります。自賠責保険に加入していれば自動車を運転することはできますが、実際に自動車事故が起こってしまった場合には、補償範囲を超えた賠償責任が生じることも少なくありません。そのため、万が一の事態に備えて、任意保険にも加入しておくことをおすすめします。
ただ、任意保険は必要な補償の内容や範囲を自分で決める必要があります。自分や家族に合った補償を選ぶことが大切です。自動車保険選びに迷った時には、自分だけで判断しようとせず、保険の専門家に相談するのがおすすめです。「ほけんの窓口」では、保険のプランに関する質問や見積もり等が、何度でも無料で相談できます。自分に合った保険を選びたい場合は、ぜひ一度ご相談ください。
※特約の名称や補償内容は保険会社ごとに異なります。
※当ページでは自動車保険に関する一般的な内容を記載しています。個別の保険商品等の詳細については保険会社および取扱代理店までお問い合わせください。
(2024年9月承認)B24-102134
監修者プロフィール
黒川 一美
日本FP協会 AFP認定者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学院修了後、IT企業や通信事業者のセールスエンジニア兼企画職として働く。出産を機に退職し、自分に合ったお金との向き合い方を見つけるため、FP資格を取得。現在は3人の子育てをしながら、多角的な視点からアドバイスができるFPを目指して活動中。FPサテライト株式会社所属FP。