火災保険の見直しは必要?
乗り換えのデメリットとタイミング、注意点
乗り換えのデメリットとタイミング、注意点
住宅を購入、新築したり、賃貸物件を契約したりする時に、必ずといっていいほど加入するのが火災保険です。入居時におすすめされた火災保険に加入し、そのまま何年も見直しをしていない人も多いのではないでしょうか。なかには、「保険加入中は乗り換えができないのでは?」と考えている人もいるかもしれません。
火災保険も、他の保険と同じように、ライフスタイルに合わせて乗り換えを検討することが大切です。ここでは、火災保険の乗り換えの必要性や、乗り換えを検討したいタイミング、火災保険の見直すポイント等について解説します。
火災保険の乗り換えは可能
火災保険は、持ち家でも賃貸物件でも乗り換えが可能です。たとえ保険期間の途中であっても、解約して別の火災保険に加入することができます。
住宅を購入する際は、ハウスメーカーや住宅ローンを組んだ金融機関がすすめる火災保険に加入するケースが大半かもしれません。賃貸物件の場合は、不動産会社がすすめる火災保険に加入する人も多いでしょう。しかし、そもそも必ずすすめられた火災保険に入らなければいけないわけではなく、自分で別の火災保険を選んでも問題はありません。また、はじめはすすめられた火災保険に加入しても、その後見直しをして、別の火災保険に乗り換えることもできます。
すすめられて加入した火災保険をそのまま継続している場合、自分にとっては不必要な補償が含まれていることも少なくありません。必要な補償内容をしっかり検討し、自分に合った補償を選択できる火災保険に変更することで、保険料を抑えられる可能性もあります。火災保険も、生命保険や自動車保険等と同様に、ライフスタイルや状況の変化に応じて見直すことが大切です。
未経過保険料は解約返戻金として返還される
火災保険は基本的に掛け捨て型の保険です。そのため、「保険期間の途中で乗り換えをすると、すでに払い込んだ保険料が無駄になってしまうのでは?」と心配になる人もいるかもしれません。
火災保険を契約途中で解約した場合は、払い込んだ保険料のうち、のこった期間(未経過期間)に相当する金額が、解約返戻金(未経過保険料)として返還されることが一般的です。そのため、保険料が無駄になるようなことはありません。
ただし、契約内容や、保険期間がどの程度のこっているかによって、解約返戻金の有無や金額は異なります。実際にどれくらいの金額が戻ってくるのか知りたい場合は、保険会社や保険代理店に確認しましょう。
火災保険を乗り換えるタイミング
火災保険には、乗り換えに適したタイミングがあります。一般的には、次のようなタイミングで、乗り換えを検討するとよいでしょう。
火災保険の満期
現在加入している火災保険の満期の時期は、乗り換えを検討するよい機会です。満期が近づき、保険会社や保険代理店から更新通知が届いたら、補償内容が今の状況に合っているかを確認し、継続するか乗り換えるか等を検討しましょう。乗り換えを検討することによって、現状に合う新しいプランや商品が見つかる可能性もあります。
建物や家族構成の変化
増改築やリフォーム等で建物の価値が変わったり、引っ越ししたり、家族構成の変化により家財の増減があったりした場合は、火災保険を見直します。
特に、増改築や引っ越し等で建物の価値が変わった時は、必ず保険会社に通知しなければなりません。通知を怠ると、もしもの時に補償が受けられない場合があるため、注意が必要です。建物の価値や、保険対象となる建物自体が変わると、保険金額や保険料も変動する可能性があります。保険料が上がるのであれば、これを機に火災保険の乗り換えを検討するのもよいでしょう。
また、結婚や出産、子どもの独立等で家族構成が変化すると、家財の内容や量も変わります。保険の対象に家財も含めている場合は、乗り換えを視野に入れつつ、補償内容の見直しを行いましょう。
外部要因による変化
建築費の変動や自然災害リスクの増減等、外部要因による変化があった時も、火災保険の乗り換えを検討するよいタイミングといえます。
例えば、材料費や輸送費等が上がって建築費が上昇すれば、住宅の価格も高くなります。反対に建築費が下がれば、火災が起こった時の再建費用も、当初の予測より低くなるでしょう。外部要因によって建物の価値が変われば、必要な保険金額や保険料も変わる可能性があります。
また、火災保険を検討する時には、自然災害の被害予測を地図にまとめた「ハザードマップ」をチェックすることも大切です。国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」を見れば、住まい近辺の災害リスクを調べることができます。ハザードマップは最新情報を基に更新されるため、更新後のハザードマップを確認すると、洪水や土砂災害等のリスクが契約時とは変わっている可能性があります。
このような外部要因の変化に応じて必要な補償が変わった時には、火災保険の見直しがおすすめです。
火災保険を乗り換える際の注意点
火災保険を乗り換える際には、知っておきたいいくつかの注意点があります。現在加入している火災保険を解約してしまう前に、以下の注意点をよく確認しておきましょう。
質権設定がある場合は金融機関の同意が必要
住宅ローンを組んで質権設定がされている火災保険の場合は、現在の保険契約を勝手に変更、解約することができません。火災保険の質権設定とは、住宅ローン等の借入金の担保として、火災保険の保険金請求権や返還保険料請求権に対して金融機関等が質権を設定することです。質権とは、住宅ローン等の債権がすべて返済されるまで、債権者(お金を貸す側)が債務者(お金を借りる側)から受取った物品や権利等の担保を占有する権利のことを指します。
通常の火災保険の契約であれば、火災等で家を失った場合の保険金は契約者であるマイホーム購入者が受取りますが、火災保険に質権を設定した場合は、金融機関等が保険金を受取ることになります。
質権設定のある火災保険を乗り換えるには、住宅ローンの借入先であり質権者でもある金融機関等の同意が必要です。質権設定されている火災保険の乗り換えを希望する場合は、金融機関に相談しましょう。
保険料が上がる可能性がある
火災保険の保険料を抑える目的で、乗り換えを検討する人も多いでしょう。しかし、火災保険の乗り換えによって、必ずしも保険料が下がるとは限らないため注意が必要です。
火災保険の保険料は、たとえ同じような補償内容でも、保険会社や保険商品によって金額が異なります。火災保険を乗り換えて保険料を節約できる場合もあれば、補償内容を手厚くした結果、逆に保険料が上がることもあります。
近年では自然災害の多発等により、火災保険の保険料は値上がり傾向です。火災保険を乗り換える際には、払い込む保険料がどのように変化するかをしっかり確認した上で検討することが大切です。特に、現在加入している火災保険の保険期間が5年以上の場合、乗り換えの検討は慎重に行うことをおすすめします。
無保険状態をつくらない
火災保険の乗り換えで重要なのは、保険の空白期間をつくらないことです。現在加入している火災保険を解約し、新しい保険の加入が承認されるまでに空白期間があると、万が一火災や自然災害が起こった時に補償が受けられなくなってしまいます。火災や自然災害はいつ発生するかわかりません。乗り換えの際は、新しい保険の加入承認を受けてから現在の保険を解約し、無保険状態をつくらないようにしましょう。
火災保険を乗り換える際のポイント
火災保険を乗り換える際の注意点に加えて、押さえておきたいポイントについてご紹介します。火災保険を乗り換える際は、次のようなポイントを意識して検討することをおすすめします。
補償内容を確認する
火災保険を乗り換える際は、補償内容について改めてしっかりと見直す必要があります。補償内容の範囲が十分か、不必要な補償が含まれていないか等、乗り換え前に補償内容をよく確認しましょう。最近では、補償内容を細かく設定できる保険商品も登場しています。住まいの状況やハザードマップ等を確認した上で、状況に合わせた補償内容を設定することが大切です。
火災保険の選び方については、以下の記事をご覧ください。
火災保険のおすすめの選び方は?補償対象や補償範囲等を解説
長期契約を検討する
火災保険は、最長で5年までの長期契約が可能です。長期契約には、短期契約に比べて保険料が割安になり、毎年の更新の手間を省けるというメリットがあります。すぐに引っ越しの予定がないのであれば、長期契約を検討するとよいでしょう。ただ、長期契約をした場合でも、住まいや家族の状況の変化等に応じて適宜見直しが必要です
地震保険への加入を検討する
火災保険を乗り換える際には、あわせて地震保険の加入を検討しましょう。地震や噴火またはこれらによる津波を原因とする損害は火災保険では原則補償の対象にはならないため、別途、地震保険への加入が必要です。地震保険は単独では加入できず、必ず火災保険とセットでの契約になります。
日本は地震大国と呼ばれるほど地震が頻発しており、いつどこで大きな地震が起こるかわかりません。地震による損害に備えたい場合は、火災保険を乗り換える際に地震保険への加入を検討することをおすすめします。
地震保険の必要性については、以下の記事をご覧ください。
地震保険は入るべき?必要性や火災保険との違い、補償について解説
火災保険の乗り換えは比較検討して行おう
火災保険は一度加入すれば安心というわけではなく、住まいや家族等の状況変化に応じて、定期的に見直すことが大切です。入居時におすすめされた火災保険に加入したまま、ずっと継続しているという人も、補償内容が現在の状況に合っているか、一度見直しをしてみるとよいでしょう。
火災保険は、保険会社や保険商品によって、補償内容や保険料が変わってきます。住まいの状況に合った火災保険を選ぶには、各社の商品を比較検討することが大切です。
多数の保険商品から自分に合う火災保険を選びたい場合は、保険の専門家に相談することをおすすめします。「ほけんの窓口」では、火災保険のプランに関する質問や見積もり等が、何度でも無料で相談できます。火災保険の乗り換えを検討する場合は、ぜひ一度ご相談ください。
- ※特約の名称や補償内容は保険会社ごとに異なります。
- ※当ページでは火災保険に関する一般的な内容を記載しています。個別の保険商品等の詳細については保険会社および取扱代理店までお問い合わせください。
(2024年3月承認)B23-104386
監修者プロフィール
黒川 一美
日本FP協会 AFP認定者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学院修了後、IT企業や通信事業者のセールスエンジニア兼企画職として働く。出産を機に退職し、自分に合ったお金との向き合い方を見つけるため、FP資格を取得。現在は3人の子育てをしながら、多角的な視点からアドバイスができるFPを目指して活動中。FPサテライト株式会社所属FP。