分譲マンションに火災保険はいらない?必要性や補償内容を解説
分譲マンションを購入すると、多くの場合、火災保険に加入することになります。特に、住宅ローンを利用する場合は、火災保険への加入が融資条件となっていることがほとんどです。
ここでは、分譲マンションの火災保険の補償対象、必要な補償と保険料、必要とされる理由、加入する際の注意点について解説します。
マンションの火災保険の補償対象
一般的なマンションの火災保険は、購入者の専有部分と家財が補償対象です。分譲マンションはエントランスや廊下等の共用部分と、購入者の専有部分で構成されています。このうち、マンションの購入者が加入する火災保険では、専有部分のみが補償対象となります。また、火災保険では建物と家財は別々の扱いとなるため、分譲マンションの場合、補償対象を「専有部分のみ」「専有部分と家財の両方」の2パターンから選ぶことが一般的です。
なお、分譲マンションの購入にあたって住宅ローンを組む場合、ほとんどの住宅ローンは建物の専有部分を保険の対象とする火災保険への加入を融資条件としているため、火災保険への加入がほぼ必須となります。融資する金融機関にとって、住宅は担保の役割があるため、担保の価値が損なわれるリスクへの対策として、火災保険への加入を求めるのです。
専有部分
分譲マンションの購入者が単独で所有している戸室の内部を、専有部分と呼びます。専有部分には、戸室の壁や床、天井で囲まれた内側部分が該当します。マンションの購入者が加入する火災保険では、建物については、専有部分のみが補償対象となります。なお、マンションのエントランスや廊下、エレベーター、バルコニーといった場所は共用部分であり、マンションの管理組合が加入する火災保険でカバーするのが一般的です。
家財
家財は、戸室の中にある、家具や家電製品等の生活用の動産を意味します。例えば、冷蔵庫や洗濯機、ソファ、テレビ、食器、衣類、本等はどれも家財にあたります。火災保険では建物と家財は別々の扱いとなるため、建物に対する補償しか契約していなかった場合、火災等で家財に損害がおよんでも、家財の損害の部分は補償されません。家財に対する補償も必要な場合は、建物とは別に、家財にも補償をつける必要があります。
マンションの火災保険に必要な補償と保険料
火災保険は火災による損害だけではなく、落雷、風災、水災等の自然災害による損害もカバーする保険です。さらに、他の戸室で発生した水ぬれによる損害や、壁の破損等の突発的な事故による損害、盗難による損害等も補償範囲に含まれる場合があります。
補償範囲は広くしておくと安心ですが、補償範囲が広いほど保険料は高くなるので、必要な補償についてしっかり検討した上で補償範囲を設定します。
マンションの火災保険に必要な補償内容は?
購入したマンションに対する火災保険の補償内容については、マンションの立地や環境から必要となる補償を考えるのが基本です。例えば、戸室が低層階だったり、川に近接していたりする場合は、台風や豪雨による浸水等の被害を受けるリスクが高いため、水災による損害を補償範囲に入れることを検討します。また、台風の被害が多い地域なら、風災の補償内容について検討してみましょう。自然災害の被害予測を地図にまとめたハザードマップ等を確認し、自身が所有するマンションのリスクに合わせた補償範囲を設定する必要があります。
※出典:「ハザードマップポータルサイト」
マンションの火災保険の保険料
火災保険の保険料は、建物の構造や専有面積、補償範囲、補償内容等によって異なります。そのため、一概に相場がいくらとはいえません。基本的に、建物の耐火性能が高く、専有面積が狭いほど保険料は割安になります。さらに、補償範囲が限られ、補償額が小さければ、その分保険料は抑えられるでしょう。
例えば、建物の構造は、M構造(一般的なマンション構造)、T構造(耐火構造)、H構造(非耐火構造)の3種類の構造級別に区分されており、どれに該当するかで保険料が変わります。一般的なマンションは燃えにくいM構造に該当し、他の構造の火災保険と比較すると保険料は割安です。
また、同じ条件でも保険会社や保険商品によって保険料が異なるため、複数の商品を比較検討の上、加入することをおすすめします。
マンションに火災保険が必要とされる理由
一般的なマンションは、一定以上の耐火性能を持つように建設されています。一定以上の耐火性能があるにもかかわらず、マンションに火災保険が必要とされるのは、どのような理由からなのでしょうか。ここでは3つの理由について解説します。
他者の失火で被害を受けても損害賠償請求できない場合がある
マンションに火災保険が必要とされる理由として、他者の失火(過失による火災)からのもらい火で被害を受けても、損害賠償請求をできない場合があることが挙げられます。
一般的に、交通事故等で損害を被った場合は、加害者に対して損害賠償請求が可能です。しかし、火災については失火責任法という法律で、失火した人に重大な過失がない限り、損害賠償責任は問えないと規定されています。この法律ができたのは明治時代で、木造家屋が中心だったため、火災は被害が広範囲におよぶ可能性があり、損害のすべてを失火者の責任とするのは重すぎるといった観点から、失火者保護のために制定されたといわれています。
失火責任法があるため、もらい火で自身の戸室が延焼被害を受けたとしても、失火した人に重大な過失がない限り、損害賠償請求をすることはできません。そのため、他者の失火により自身の専有部分や家財に損害が出たとしても、その修復費用や買い替え費用等はすべて自己負担となってしまうのです。
火災保険に入ることによって、このような損害を保険金でカバーできます。もらい火は自身がどんなに気をつけていても完全に防げないため、火災保険に入っておくことが必要となるのです。
自身の失火による他者への損害をカバーできる
自身の失火による他者への損害をカバーできる点も、マンションに火災保険が必要とされる理由といえます。失火して周囲に損害を与えた場合、失火責任法の規定により、重大な過失が認められなければ、法律上の損害賠償責任を負うことはありません。しかし、すべての火災が該当するとは限りません。重大な過失とは、少しでも注意すれば回避できたにもかかわらず、その注意を怠ったために損害が発生したという場合を指し、重大な過失にあたるかどうかは、最終的には裁判所によって判断されます。
火災以外の自然災害等にも備えられる
火災以外の自然災害等に備えられることも、マンションに火災保険が必要とされる理由のひとつです。火災保険の補償範囲は火災だけではなく、落雷、風災、水災等の自然災害による損害、水ぬれによる損害、盗難、外部からの物体の飛来による損害等にもおよびます。
近年は、気候変動等の影響を受けて大雨や豪雨、台風等による風水害にあうリスクも高まっているため、火災保険に加入しておくことで、自然災害等による損害に幅広く備えることが可能です。
マンションの火災保険に加入する際の注意点
火災保険では、地震を原因とする火災による損害や、地震により延焼・拡大した損害は、補償の対象になりません。地震や噴火、またはこれらによる津波による損害に備えるには、地震保険への加入が必要となります。地震保険は、単独での加入ができず、火災保険とセットで加入する保険です。地震による損害に備えたい場合は、火災保険に加入する時にあわせて地震保険への加入も検討してみてください。
また、火災保険には免責事項が定められており、免責事項に該当する場合は火災等による損害であっても保険金は支払われません。免責事項は保険会社や商品によって異なりますが、一般的な例は以下のとおりです。
■火災保険の免責事項
免責事項 | 内容 |
---|---|
故意・重大な過失・法令違反による損害 | 著しく注意力を欠いたことで発生した場合や、保険金を目的に自分で火をつけたような場合 |
建物の経年劣化に伴う損害 | 経年劣化はすべての建物に起こるため、補償の対象とならない |
戦争・紛争・革命等による損害 | 被害が広範囲におよび、保険会社の負担が著しく大きくなる可能性があるため、免責事項とされる |
保険料支払いの前に起きた事故 | 補償の対象となるのは、保険料支払い後に発生した損害のみ |
地震や噴火、またはこれらによる津波による損害 | 被害が広範囲におよぶ可能性が高く、保険会社の負担が著しく大きくなる可能性があるので、火災保険では免責事項とされる |
核燃料物質・核燃料物質等の原子力災害による損害 | 被害が広範囲におよび、保険会社の負担が著しく大きくなる可能性があるため、免責事項とされる |
地震保険については、以下の記事をご覧ください。
地震保険は入るべき?必要性や火災保険との違い、補償について解説
自身に適したマンションの火災保険を検討しよう
分譲マンションの火災保険は、建物の専有部分や家財を対象とし、火災のみならずさまざまな自然災害や盗難等による損害まで広くカバーできる保険商品です。分譲マンションの購入にあたり住宅ローンを利用する際、ほとんどの場合で融資条件として火災保険への加入が求められます。また、住宅ローンを組まない場合でも、他者からの延焼被害や、失火してしまった場合の他者への補償等に備えられるので、マンションを購入する際は加入を検討するとよいでしょう。
「ほけんの窓口」では、保険のプランに関する質問や見積もり等が、何度でも無料で相談できます。自身に適した火災保険を検討したい場合は、ぜひ「ほけんの窓口」へご相談ください。
- ※特約の名称や補償内容は保険会社ごとに異なります。
- ※当ページでは火災保険に関する一般的な内容を記載しています。個別の保険商品等の詳細については保険会社および取扱代理店までお問い合わせください。
(2024年2月承認)B23-103852
監修者プロフィール
原 絢子
日本FP協会 AFP認定者、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
自分で保険の見直しを行ったのをきっかけに、お金の知識を身につけることの大切さを実感し、ファイナンシャルプランナーとして活動を始める。モットーは「自分のお金を他人任せにしない」。一人でも多くの人がお金を味方につけて、自分の思い描く人生を歩んでほしいと、マネーリテラシーの重要性を精力的に発信している。FPサテライト株式会社所属FP。