ノンフリート等級とは?
等級による割引・割増率と等級の引き継ぎ等を解説
等級による割引・割増率と等級の引き継ぎ等を解説
自動車保険は、契約者間の保険料負担の公平性を確保するために、事故のリスクが高い人ほど保険料負担が重くなるように設計されています。その保険料を算出するために用いられるのがノンフリート等級です。
ここでは、ノンフリート等級制度の仕組みやノンフリート等級が上下するケースの他、等級の引き継ぎ方等について解説します。
ノンフリート等級制度は事故歴に応じて保険料を割引・割増する制度
ノンフリート等級制度は、事故歴に応じて、翌契約期間の保険料を割引・割増する制度です。ノンフリート等級制度では、1等級から20等級までのノンフリート等級と、無事故・事故有の区分によって設定される事故有係数適用期間によって、保険料の割引率・割増率が変わります。ノンフリート等級が上がるほど保険料の割引率は高くなり、等級が下がれば割引率は低くなります。なお、ノンフリート等級制度は、所有または使用する自動車が9台以下の自動車保険契約に適用され、10台以上の場合の自動車保険契約には適用されません。
一般的に、初めて自動車保険に加入する際のノンフリート等級は「6等級(S)」または「7等級(S)」です。自動車保険の契約期間中に保険を使わなければ、1年あたり1等級ずつ上がっていきます。例えば、1年契約の自動車保険で無事故なら1年で1等級、3年契約で無事故なら3年で3等級上がります。一方、事故を起こして保険を使うと、事故の内容に応じて次契約の等級が下がる仕組みです。
ここからは、無事故・事故有の区分によって保険料を計算する際に用いる事故有係数適用期間と、11等級以上の人が2台目以降の車を持つ際に適用できるセカンドカー割引について解説します。
事故有係数適用期間は保険料を計算する際に用いる係数
事故有係数適用期間は、保険料を計算する際に用いられる係数です。ノンフリート等級が7等級以上では、無事故と事故有で割引率が分けられており、事故が発生して保険を使うと、次契約の等級が下がるだけでなく事故に応じた事故有係数適用期間が適用され、保険料が上がります。
例えば、1等級ダウン事故を起こした場合、事故有の割引率が1年間適用されます。3等級ダウン事故を起こした場合は3年間です。なお、事故有係数適用期間は1年から6年までで、等級が下がるたびに加算されます。
■ノンフリート等級・事故有係数適用期間による割引率と割増率
無事故 | 事故有 | |
---|---|---|
1等級 | +108% | |
2等級 | +63% | |
3等級 | +38% | |
4等級 | +7% | |
5等級 | -2% | |
6等級(F) | -13% | |
7等級(F) | -27% | -14% |
8等級 | -38% | -15% |
9等級 | -44% | -18% |
10等級 | -46% | -19% |
11等級 | -48% | -20% |
12等級 | -50% | -22% |
13等級 | -51% | -24% |
14等級 | -52% | -25% |
15等級 | -53% | -28% |
16等級 | -54% | -32% |
17等級 | -55% | -44% |
18等級 | -56% | -46% |
19等級 | -57% | -50% |
20等級 | -63% | -51% |
※Fは自動車保険の契約初年でなく継続した場合を指す
11等級以上の人は2台目以降の車にセカンドカー割引が適用される
セカンドカー割引は、ノンフリート等級が11等級以上の場合に、2台目以降の車の自動車保険契約が割引率の高い7等級・無事故からスタートできる制度です。ただし、セカンドカー割引の適用にはいくつかの条件があります。なお、自分のノンフリート等級は、保険証券や保険会社のウェブサイトのマイページ等で確認できます。
<セカンドカー割引の適用条件>
- 1台目、2台目のどちらの車も自家用8車種であること
- 2台目以降の契約の記名被保険者と車の所有者が個人であり、それぞれ以下のいずれかに該当すること
■自動車保険の記名被保険者と車の所有者
記名被保険者 | 車の所有者 |
---|---|
|
※配偶者には同居の内縁パートナー、同性パートナーも含まれる場合がある
ノンフリート等級が上がるケース
ノンフリート等級を上げるには、2つのケースのどちらかに該当する必要があります。それぞれについて解説します。
無事故で契約期間を終える
ノンフリート等級が上がるケースとして、契約期間を無事故で終える場合が挙げられます。契約期間中に事故がなく保険の利用もなければ、1年契約なら翌年に1等級上がります。事故があって保険を使った場合でも、それがノーカウント事故であれば等級には影響しません。ノーカウント事故にあたるのは、自分に過失がなく相手の保険で補償される事故や、無保険車傷害特約が適用される事故、搭乗者傷害保険事故、人身傷害保険事故等です。
事故の際に自動車保険を利用しない
事故があっても、自動車保険を利用しなければ、ノンフリート等級は上がります。ノーカウント事故にあたらない事故を起こしても、自動車保険を利用しなければ、無事故と同じ扱いになって、契約期間明けの等級は契約年数の分だけ上がります。そのため事故の損害額によっては、保険を使わずに自分で修理費等を負担したほうが、支出を抑えられるケースがあります。
ノンフリート等級が下がるケース
ノンフリート等級が下がるのは、事故の際に保険を使った時です。事故はその内容により、2種類に区別されます。それぞれについて解説します。
1等級ダウン事故
1等級ダウン事故は、事故1件につきノンフリート等級が1等級下がる事故です。該当するのは、火災・台風等の災害による被害や飛来物の衝突、盗難・いたずら等、運転者が防ぐのが難しい事故です。
3等級ダウン事故
3等級ダウン事故は、事故1件につきノンフリート等級が3等級下がる事故です。他人の車や歩行者等との衝突等の対人賠償保険や対物賠償保険を使う事故、車両保険を利用する事故等が該当します。
■事故の種類と等級、事故有係数適用期間、事故例の関係
等級 | 事故有係数適用期間 | 事故例 | |
---|---|---|---|
無事故 | 1等級上がる※ | ― | ― |
ノーカウント事故 | 影響なし ノーカウント事故のみであれば1等級上がる※ | ― | 自分に過失がなく相手の保険で補償される場合、無保険車傷害特約が適用される事故、搭乗者傷害保険事故、人身傷害保険事故等 |
1等級ダウン事故 | 事故1件につき1等級下がる | 1年間 | 火災・台風等の災害による被害、飛来物の衝突、盗難・いたずら等 |
3等級ダウン事故 | 事故1件につき3等級下がる | 3年間 | 対人賠償保険や対物賠償保険、車両保険を利用する事故等 |
※1年契約の場合
事故によって等級や事故有係数適用期間等がどのように変化するか、11等級・事故有係数適用期間0年(無事故)で1年契約の自動車保険を契約している人を例に見てみましょう。1等級ダウン事故で保険を使った場合と、3等級ダウン事故で保険を使った1年後に1等級ダウン事故で保険を使った場合の、等級や事故有係数適用期間は、それぞれ以下のように推移します。
■1等級ダウン事故で保険を使った場合
等級 | 事故有係数適用期間 | 保険料割引率 | |
---|---|---|---|
事故前 | 11等級 | 0年(無事故) | -48% |
事故の翌年 | 10等級 | 1年 | -19% |
事故の2年後 | 11等級 | 0年(無事故) | -48% |
■3等級ダウン事故で保険を使った1年後に1等級ダウン事故で保険を使った場合
等級 | 事故有係数適用期間 | 保険料割引率 | |
---|---|---|---|
事故前 | 11等級 | 0年(無事故) | -48% |
翌年 | 8等級 | 3年 | -15% |
2年後 | 7等級 | 4年 | -14% |
3年後 | 8等級 | 3年 | -15% |
4年後 | 9等級 | 2年 | -18% |
5年後 | 10等級 | 1年 | -19% |
6年後 | 11等級 | 0年(無事故) | -48% |
ノンフリート等級の引き継ぎ
ノンフリート等級は、現在と異なる保険会社の自動車保険に切り替える場合でも、保険の満期日の翌日から7日以内に手続きをすれば、引き継ぐことが可能です。また、契約車の記名被保険者(主に車を使用する人)を変更する場合でも、配偶者や同居の親族等であればノンフリート等級を引き継げる場合があります。それぞれについて解説します。
ノンフリート等級の保険会社間での引き継ぎ
ノンフリート等級は保険会社間で引き継ぐことが可能です。自動車保険は、代理店型・ダイレクト型等のさまざまな保険商品が販売されており、そのほぼすべてにおいて、保険会社間で等級を引き継いで契約することができます。現在と異なる保険会社の自動車保険にノンフリート等級を引き継ぐためには、保険期間満了日の翌日から7日以内に手続きを行うことが条件です。ただし、一部の共済とはノンフリート等級の引き継ぎができない場合があります。
家族間での引き継ぎ
家族間でも一定の条件を満たせばノンフリート等級を引き継ぐことが可能です。契約の車を主に使用する人が変わると、自動車保険の記名被保険者を変更する必要があります。その際、新しい記名被保険者が、元の記名被保険者の配偶者か、元の記名被保険者またはその配偶者の同居の親族である場合は、ノンフリート等級を引き継ぐことができます。
一方で、親族でも、離れて暮らす子どものように別居の場合、ノンフリート等級は引き継げません。また、記名被保険者が死亡した場合は、同居の親族であれば等級の引き継ぎが可能です。その際は、車の名義変更と併せて手続きすることが必要です。
しばらく自動車を保有しない場合は中断証明書で等級を引き継げる
しばらく自動車を保有しない場合は、保険会社から発行される中断証明書によって、再度契約する際にノンフリート等級を引き継ぐことが可能です。一般的にノンフリート等級の引き継ぎは、保険契約の満期日の翌日から7日以内の手続きが必要ですが、廃車にしたり、海外に赴任したりして自動車保険に長期間加入しない場合は、保険会社に中断証明書を発行してもらいましょう。自動車保険にあらためて加入する際、中断した契約の満期日又は解約日の翌日から起算して10年以内に加入する保険会社に中断証明書を提出すれば、ノンフリート等級を引き継ぐことができます。
自分に合った自動車保険の利用を検討しよう
自動車保険には、事故の有無に応じて保険料が変わるノンフリート等級制度があります。無事故であれば等級が上がり、保険料の割引率が高くなっていきますが、事故があると翌契約期間の保険料は割高になるので、小さい事故の場合は保険を使うかどうか検討が必要です。
「ほけんの窓口」では、保険のプランに関する質問や見積もり等が、何度でも無料で相談できます。自分に合った自動車保険を検討したい場合は、ぜひ「ほけんの窓口」へご相談ください。
- ※特約の名称や補償内容は保険会社ごとに異なります。
- ※当ページでは自動車保険に関する一般的な内容を記載しています。個別の保険商品等の詳細については保険会社および取扱代理店までお問い合わせください。
(2024年3月承認)B23-104376
監修者プロフィール
黒川 一美
日本FP協会 AFP認定者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学院修了後、IT企業や通信事業者のセールスエンジニア兼企画職として働く。出産を機に退職し、自分に合ったお金との向き合い方を見つけるため、FP資格を取得。現在は3人の子育てをしながら、多角的な視点からアドバイスができるFPを目指して活動中。FPサテライト株式会社所属FP。