盗難に備える保険はある?
空き巣・強盗被害や車の盗難への補償を解説
空き巣・強盗被害や車の盗難への補償を解説

日常生活では、さまざまな盗難リスクがあります。空き巣や強盗のニュースを目にすると、「自分の身近でもそのような事件が起こるのでは」と不安に感じる人も多いかもしれません。
このような住宅を対象とした空き巣や強盗の他、車の盗難といったリスクは、火災保険や自動車保険の盗難補償によってカバーできます。いざという時の安心を得るためには、セキュリティ対策だけでなく保険で備える方法についても知っておきましょう。
ここでは、空き巣や強盗、車の盗難等に備えられる保険の種類や、補償の範囲等について解説します。
この記事のポイント
- 警察庁によると、盗難リスクは増加傾向にある
- 火災保険に盗難補償をセットすることで、空き巣・窃盗による建物や家財の損害をカバーできる
- 自動車の盗難リスクに備えるには、車両保険に加入する
- 盗難被害にあったら、まず警察に盗難届を提出する
盗難リスクは増加傾向にある
海外に比べると日本は安全だといわれますが、「絶対に大丈夫」ということはありません。警察庁によれば、住宅に侵入して金品を盗む「侵入窃盗」の認知件数は2023年で1万7,469件となり、前年と比較して11.3%の増加となっています。侵入窃盗の手口別認知件数を見ると、空き巣が26.8%ともっとも多く、4分の1以上を占めています。
さらに最近、連続して発生しているのが、家人を脅して金品を強奪する「侵入強盗」事件です。侵入強盗の認知件数は、2003年をピークに減少傾向にあったものの、2023年は414件で、前年に比べて42.8%も増加しています。
また、2023年の車の盗難被害の認知件数は5,762件で、ここ3年で増加傾向にあります。
盗難被害にあった場合、多大な損害を被るケースは少なくありません。盗難の被害はもちろんのこと、ドアや鍵、窓等を壊されたりする可能性もあります。運悪く犯人と鉢合わせしてしまった場合、身体に危害を加えられるおそれもあるでしょう。
このようなリスクを考えると、日頃から盗難リスクに備えておくことは大切だといえます。
建物や家財の盗難リスクに備える保険
建物や家財の盗難リスクに備える保険は、火災保険です。火災保険は、火災や風災等だけでなく、盗難等による損害も補償の対象となります。空き巣や強盗、窃盗やその未遂による建物や家財の損害は、火災保険に盗難補償をセットすることでカバーできます。盗難等の被害にあった際に受取れる金額は、実際の損害額相当です。ただし、加入時に定めた保険金額が上限になります。
火災保険の盗難補償での補償例
火災保険の補償対象は、「建物」と「家財」のどちらか、あるいは両方を指定して契約します。「建物」「家財」のそれぞれで盗難補償の対象になるのは、以下のようなケースです。
■火災保険の盗難補償での補償例
補償対象 | 補償例 |
---|---|
建物 | ・空き巣が室内に侵入する際、窓ガラスを割られた |
家財 | ・空き巣に入られてパソコンや衣類、バッグ等が盗まれた |
火災保険の補償内容については、以下の記事をご覧ください。
火災保険の補償内容・補償範囲はどこまで?保険料を抑えるポイントも解説
火災保険の盗難補償が適用されないケース
火災保険の契約にあたり補償対象に含めなかったものは、盗難等によって損害が発生しても補償されません。例えば、火災保険の補償対象を「建物」のみとしていた場合、空き巣に入られてパソコン等の家財が盗まれても、補償は受けられないということになります。
自転車や原付バイク(総排気量125cc以下)については、玄関や車庫、屋根付きの駐輪場等、火災保険の対象となる建物の敷地内に収容されている時の盗難であれば、補償が受けられます。ただし、自転車や原付バイクが外出先で盗まれた場合は補償されません。また、自動車に関しては収容場所にかかわらず火災保険では対応できず、自動車保険(車両保険)への加入が必要になります。
なお、一般的に高額な美術品や宝石、骨董品等は、1個または1組の価格が保険会社所定の金額を超える場合、火災保険の加入時に申告しないと補償対象外となるため注意が必要です。また、1個または1組あたりの補償額に上限が決められていることが一般的です。
現金については原則として補償対象外ですが、盗難の場合のみ、一定金額まで補償対象になる場合があります。
家財保険については、以下の記事をご覧ください。
家財保険とは?火災保険との違いや賃貸での必要性、補償対象を解説
強盗等によるケガや死亡に備える保険
自宅に強盗に入られた場合、加害者から暴行を受けてケガをするリスクや、最悪の場合は死亡のリスクもあります。強盗等によるケガのリスクに対しては傷害保険、死亡リスクには生命保険(死亡保険)で備えられます。傷害保険は、日常生活におけるケガに備える保険です。ケガによる死亡や、入院・通院の際に保険金や給付金が支払われます。また、死亡保険は、被保険者に万が一のことがあった時に、あらかじめ指定した受取人に保険金が支払われます。
本来、強盗等に巻き込まれてケガをした場合、加害者が治療費を全額支払うべきです。とはいえ、加害者が判明する前に治療を受けなければいけないケースも少なくありません。そのような場合は、加入している公的医療保険(協会けんぽ、健康保険組合、国民健康保険等)に「第三者行為による傷病届」を提出することで、公的医療保険を使って治療を受けることができます。
「第三者行為による傷病届」を提出すると、後日、公的医療保険から加害者に対して治療費の請求が行われますが、治療費の自己負担分(1~3割)については一時的に被害者が立て替えて支払う必要があります。
また、暴行等によってケガをした時は、治療費や慰謝料等の損害賠償請求が可能です。ただし、実際に賠償金が支払われるにはある程度の時間がかかりますし、加害者に支払能力がなければ損害に見合った金額が支払われない可能性もあります。
このようなさまざまなリスクをカバーするには、傷害保険や生命保険が役立ちます。
車の盗難リスクに備える保険
車が盗難にあった際の損害をカバーするには、自動車保険(任意保険)とセットで車両保険に加入する必要があります。車両保険は、事故等による自分の車への損害を補償する保険です。相手のある交通事故だけではなく、盗難やいたずら、自然災害(地震・噴火・津波を除く)等によって被った損害についても補償されます。なお、車両保険は自動車保険の一部であり、単独では契約できません。
車両保険には、補償範囲が広い「一般型」と補償範囲が限定される「限定型(エコノミー型)」の大きく2種類がありますが、車の盗難についてはどちらのタイプでも補償対象となります。また、対象となる車に固定されているカーナビやETC車載器の盗難についても補償されます。
ただし、「エンジンをかけたまま駐車していた」「車にキーを付けっぱなしにしていた」等、車のドライバーや搭乗者に過失があるとみなされた場合は、盗難にあっても補償の対象にはなりません。
車両保険については、以下の記事をご覧ください。
車両保険はいらない?必要なケースや保険料を抑えるポイントを解説
持ち物の盗難リスクに備える保険
持ち物の盗難リスクは、「携行品損害補償」でカバーできます。携行品損害補償とは、カメラやバッグ、衣類等、身の回り品が盗難にあった場合に保険金が受取れる補償です。火災保険や自動車保険にセットできる他、クレジットカードの付帯保険に含まれている場合もあります。また、旅行中であれば、国内旅行傷害保険や海外旅行保険といった旅行保険の携行品損害補償を適用できます。
ただし、携行品損害補償を複数の保険で契約していても、損害額を超える保険金を受取ることはできません。補償額の合算を上限にして、実際の損害額相当を受取れます。
携行品損害補償で補償される金額は、被害品の「時価額」または「修繕費」のいずれか低いほうとなります。ただし、紛失や置き忘れといった自己責任による損害は補償対象外です。他にも対象外となるものは、小切手やクレジットカード、定期券、コンタクトレンズ、特定のスポーツ用具等といったように具体的に設定されているため、詳細は保険会社に確認する必要があります。
なお、現金については、海外旅行保険では補償対象外ですが、火災保険や自動車保険、クレジットカード、国内旅行傷害保険にセットしている場合は、一定の範囲内で補償を受けられることがあります。
盗難被害にあったらどうすればいい?
実際に自宅に空き巣が入ったり、駐車していた車が盗まれたりすると、慌ててパニックに陥ってしまいがちです。盗難被害にあってしまった時は、まず警察に連絡し、盗難届を提出します。その際に発行される「盗難届の受理番号」は保険金請求の際に必要となるため、届け出た日時や警察署名とともに控えておき、紛失しないように保管してください。
盗難届の提出にあたっては、何が盗まれたかをしっかりと確認する必要があります。クレジットカードやキャッシュカード、通帳、携帯電話(スマートフォン)等、不正利用のおそれがあるものが盗まれた場合は、すぐに利用停止の手続きをしてください。
保険会社への連絡は、利用停止手続きを完了した後でも問題ありません。インターネットまたは電話で保険会社、あるいは保険代理店へ連絡し、指示にしたがって必要書類等を準備しましょう。
盗難リスクに備えて、損害保険の盗難補償を確認しよう
建物や家財、車等の盗難リスクに保険で備えるには、建物・家財は火災保険、車は自動車保険と、それぞれ別の種類の損害保険に加入する必要があります。また、身の回り品の盗難に備える携行品損害補償は、他の損害保険やクレジットカードの付帯保険に含まれていることもあります。複数の保険で携行品損害補償を契約していても、実際の損害額を超える保険金を受取ることはできません。そのため、現在加入している保険の内容をよく確認することが大切です。
盗難リスクに備えて保険を検討する際は、保険の専門家に相談するのがおすすめです。「ほけんの窓口」では、保険のプランに関する質問や見積もりが、何度でも無料で相談できます。加入している保険の補償内容が重複していないかどうかの確認も可能です。ぜひ「ほけんの窓口」へお気軽にご相談ください。
- ※特約の名称や補償内容は保険会社ごとに異なります。
- ※当ページでは火災保険・自動車保険、旅行保険に関する一般的な内容を記載しています。個別の保険商品等の詳細については保険会社および取扱代理店までお問い合わせください。
(2025年3月承認)B24-202124
盗難に備える保険についてよくある質問
盗難に備える保険について、よく聞かれる疑問をまとめました。それぞれの質問について解説していますので、参考にしてください。
- 建物や家財の盗難リスクに備えるには何の保険に加入すればいいですか?
- 建物や家財の盗難リスクに備えるには、火災保険への加入が必要です。火災保険に盗難補償がセットされていれば、空き巣や強盗、窃盗、またその未遂による建物や家財の損害が補償されます。例えば、「泥棒に窓ガラスやドアを壊された」「空き巣に入られてパソコンや衣類等を盗まれた」といった場合に補償が受けられます。
- 火災保険の盗難補償で対象外になるのはどのようなものですか?
- 火災保険は、「建物」と「家財」のどちらか、あるいは両方を指定して加入するため、補償対象に含めなかったものは、盗難等にあっても補償されません。また、自動車や、外出先で盗まれた自転車や原付バイク(総排気量125cc以下)は補償対象外です。美術品や骨董品等においては、1個または1組の価格が保険会社所定の金額を超える場合、火災保険の加入時に申告しないと補償対象にならないことがあります。
- 車の盗難リスクに備えるには何の保険に加入すればいいですか?
- 車の盗難リスクに備えるには、自動車保険(任意保険)とセットで車両保険に加入する必要があります。車両保険に加入していれば、「一般型」と「限定型(エコノミー型)」のどちらのタイプでも車の盗難は補償対象になります。なお、車のドライバーや搭乗者に過失があるとみなされた場合は補償対象外です。
- 持ち物の盗難リスクに備えるには何の保険に加入すればいいですか?
- 持ち物の盗難リスクに備えるには「携行品損害補償」のある保険に加入するといいでしょう。携行品損害補償は、火災保険や自動車保険にセットできる他、クレジットカードの付帯保険に含まれている場合もあります。また、旅行中であれば、国内旅行傷害保険や海外旅行保険といった旅行保険の携行品損害補償を適用できます。
監修者プロフィール
黒川 一美
日本FP協会 AFP認定者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学院修了後、IT企業や通信事業者のセールスエンジニア兼企画職として働く。出産を機に退職し、自分に合ったお金との向き合い方を見つけるため、FP資格を取得。現在は3人の子育てをしながら、多角的な視点からアドバイスができるFPを目指して活動中。FPサテライト株式会社所属FP。

