安定期の企業
創業から20年以上の期間が過ぎ、一定の事業規模になると、右肩上がりの成長よりも安定的な発展と事業継続を目指す段階になります。
安定した経営を末永く続けていくために、幹部社員の育成や借入金の整理、社内の各種制度(退職金や各種福利厚生など)の充実などが必要になります。
安定期の企業がすべきこと
創業から年数が経ち経営が安定すると同時に、経営者や従業員も年齢を重ねています。
そのため、安定期に入っている企業は、優先して後継者や幹部社員の育成をしていかなくてはなりませんが、経営者やキャリアのある幹部社員の後継になるような人材の育成はそう簡単ではありません。ある程度の時間がかかることを意識して準備しましょう。
また、安定期には、設備投資が過剰になりがちです。不要なリース契約があれば、途中解約する、稼働していない生産性が低い設備は売却するなど、売上に見合った規模への見直しが求められます。
成長期には右肩上がりを続けていた売上も、安定期には横ばい傾向になってきます。
確実な予算実績管理を行い、無駄な借入はなくし、資金繰りの改善に取り組んでいきましょう。
役員退職金の準備
経営者は運転資金が不足すれば、会社存続のために、個人資金を会社に差し入れざるを得ないこともあります。
また、経営者の資産には事業用資産が多い傾向にあり、企業の後継者が事業用資産を相続できるような遺産分割も必要になってきます。
このような経営者の資産や生活を守るために、役員退職金(死亡退職金、勇退退職金)の準備についても、この時期に整備しておきましょう。
生命保険であれば、万が一の場合には保険金を受け取ることができ、勇退の場合にはその時点での解約返戻金を活用することで、死亡退職金・勇退退職金のいずれにも活かせるので効率的です。
役員退職金の準備はなるべく早期に制度を導入するに越したことはありません。
生命保険で準備するにしても早く準備を始めるほど保険期間が長くなるので、毎年の保険料負担も軽減できます。
また適正な水準での役員退職金の金額を決めるために、役員退職金規程の整備も必要です。
従業員の福利厚生の整備
安定した経営を維持するためには、継続して優秀な人材の採用をすることも重要です。入社を検討する人は、他の条件に大きな違いがなければ、福利厚生などが充実している企業を選ぶでしょう。
優秀な人材が定着するためにも、従業員が安心して働ける環境を整えることが求められます。そのためにも退職金制度などの各種福利厚生の整備をすることが大切です。
福利厚生といっても制度は下記のようにさまざまです。それぞれの企業に合った制度を、できるところから導入・拡充していくことがポイントです。
従業員向けの主な福利厚生制度の例
退職金制度 | 死亡や定年などの退職の際に企業から一定の金額を支給 |
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弔慰金制度 | 企業が死亡した従業員の功労として遺族に一定の金額を支給 |
慶弔見舞金 | 従業員やその家族に慶事や不幸があったときに一定の金額を支給 |
住宅手当 | 従業員の経済的負担を援助するために家賃補助や社員寮などを提供 |
財形制度 | 従業員が給与天引きでお金を貯めることができ税制上の優遇もある制度 |
労災上乗せ | 国の労災制度にさらに企業が上乗せして一定の金額を支給 |
これらの中でも特に優先したい福利厚生が退職金制度です。役員退職金でも従業員退職金でも、規程を定めたら、規程に該当する社員には退職金を支払うことになります。
たとえ安定期に入った企業でも退職金を現金や借入などで一括して支払うのは大変です。
複数の従業員の退職が重なってしまえば資金繰りが悪化することもあるでしょう。
そうしたことを防ぐためにも生命保険の活用が有効です。
従業員の退職金をカバーするには団体定期保険や養老保険などが活用できます。
事業承継対策
事務所や工場など、事業用資産が多い経営者に相続が発生すると、事業を承継する後継者の負担が大きくなりがちです。その対策として相続財産の評価を引き下げることは必須で、自社株買いなどがこれに該当します。
企業経営に関与する相続人に事業資産を相続してもらうために、遺産分割対策も同時に行います。自社株、個人名義の土地・建物、負債、個人保証などの現状を把握し、事業承継計画を作成します。
自社株を買うにも現金は必要ですし、他の相続人に事業用資産以外のものを渡すにも分割しやすい現金があればスムーズです。 生命保険なら事業承継と相続が発生したときに現金で準備することができます。
まとめ
安定期の企業は、さらに事業の維持継続に向けて体制作りが大切です。
その中でも後継者を決めて、どのように事業承継をしていくかはどの企業でも大きな課題です。
後継者の教育と事業承継を円滑に行うための対策を並行して講じていきましょう。
対策の一つにもなる、役員退職金の準備などには生命保険が活用できます。従業員の福利厚生にも生命保険の活用が有効です。