社長が死亡したらどうすればいい?家族が知っておきたい手続きを解説

社長が突然亡くなったことにより、遺族や従業員はどうすればいいか戸惑うこともあるでしょう。事業を継続していくためには、まずは何をしたらいいのでしょうか。

本記事では社長が亡くなったあとに必要な手続きや、生前から準備しておきたい備えについて解説します。

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社長が死亡した時に必要な手続き

まずは社内外への連絡や、当面の代行者の選任が必要です。社長が亡くなってつらい時ですが、会社の業務を維持するためにも、社長の業務を役員や従業員で担う必要があるからです。

社内外への連絡

従業員や取引先・顧客等の関係者へ、社長が亡くなった旨を伝えます。多くの企業では社長自身が取引において重要な役割を果たしていると思われます。今後の取引の継続に影響することもあるため、取引先等への連絡は速やかにかつ、慎重に行う必要があります。

葬儀については、社葬という選択肢もあります。社葬を行うかどうかについては、遺族の意向を尊重して決めるようにしましょう。社葬を行う場合には、遺族・葬儀会社と相談しながら、社葬の形式や連絡する取引先を決定するといいでしょう。

後任の代表者を選任する

取締役会を設置している会社の場合は、取締役の中から後任の代表者を選任します。取締役会設置会社では、会社法で取締役は3人以上でなければならないとされています。

社長の死亡により残った取締役が3人以上の場合は、その中の取締役または新たに選任する取締役の中から後任の代表者を選任します。残った取締役が2人以下になる場合は、株主総会で3人目の取締役を選任し、その後その中の取締役から代表者を選任します。

一方、取締役会非設置会社では、取締役の各自が会社を代表するとされているため、代表者の選任は必須ではありません。ただし、代表取締役を決めたいという場合には、株主総会の決議等の方法により選任することもできます。

なお、取締役会を設置しているかどうかにかかわらず、取締役が欠けていることにより後任の代表者が選任できない場合は、選任の必要性がある場合に限り、株主等が一時代表取締役等の選任を裁判所に申し立てることができます。

後任の代表者が選任されたら速やかに代表者変更の登記を行い、これまで社長名義だったものについて、名義変更を行うようにしましょう。

後任の代表者がいない場合

後任の代表者がいない場合は、会社の解散を検討する必要があります。会社を解散する場合は株主総会による特別決議が必要です。特別決議は、議決権の行使が可能な過半数以上の株主が出席し、その株主から3分の2以上の賛成が必要になります(ただし、会社の定款において異なる割合を定めている場合にはその割合による)。

なお、株主が社長のみだった場合には、株式を相続または取得した人が株主となります。

解散の決定後、株主総会の決議で清算人を選任し、会社の財産を清算する処理に進みます。ただし、会社が債務超過になっている場合、社長が多額の連帯保証債務を負担している場合等については、解散とは別に破産手続き等の倒産処理手続きを選択するとともに、相続放棄等を検討する必要があります。

会社の株式は相続財産として取り扱う

社長が保有している株式は相続財産の対象です。後継者以外にも相続人がいる場合は、株式の保有率により会社の経営権が変わってしまう場合もあるため、後継者が株式を集中して保有できるようにしておくとよいでしょう。

会社は継続していくものの、株式を相続した人が会社とは関わらないということもあるでしょう。このような場合は、会社や第三者へ株式を譲渡する方法もあります。しかし、相続した株式が上場していない場合は、第三者に譲渡しようとしても買い手が見つからないことが多いため、会社に株式を買い取ってもらえないか確認してみることをおすすめします。

社長が生前にできる備え

社長は自分にもしものことがあった場合、残された会社をどうするのか、生前から事業承継や相続対策について考えておきたいところです。万が一の場合、事業保障や自社株買い取り資金の確保、代償分割等の相続対策としては生命保険が有効です。

事業承継では後継者を決めておくことが重要

事業承継において昨今深刻な問題となっているのが、会社を引き継ぐ後継者がいないことです。適任の後継者がいる場合は問題ありませんが、親族や社内に後継者がいない場合は、早いうちから事業承継について考えておく必要があります。

事業承継を行う場合は、以下のような方法があります。

  • 親族内承継
  • 従業員承継
  • M&A

親族内承継のメリットは周りから理解を得やすく、承継までの準備期間を確保できることです。また、相続等による財産や株式の後継者移転も可能です。デメリットは後継者の能力が十分であるとは限らないことや親族間でトラブルが起こる可能性があることです。

社内の役員や従業員・外部の第三者に親族よりも適した後継者がいるのであれば、その人への事業承継を検討するのもよいでしょう。社内の役員や従業員に承継する場合は、社長の考えや社風も承継した経営が期待できます。

ただし、後継者の資金面の負担が大きいこと、株式の譲渡に際して親族から反対される可能性があること等の注意点もあります。
親族内や従業員に承継せず、M&Aにより事業承継を行う方法もあります。

いずれの方法を選択するにしても、事業承継を検討する場合は相応の準備が必要となるため、早いうちから準備を進めておくとよいでしょう。

相続対策には生命保険も活用

社長が死亡した場合は事業保障や代償分割のために多くの資金が必要となることが考えられます。

事業保障資金とは、経営者に万が一のことがあった場合でも事業を存続させるための資金です。従業員の給与や家賃等の固定費や運転資金に加え、借入金がある場合には、一括返済できる金額を準備しておくとよいでしょう。

それに加えて、社長個人としての相続対策も必要です。事業保障にも個人の対策にも生命保険の活用が有効です。

個人として生命保険に加入する

生命保険に加入する場合は、個人として加入する方法と、法人として加入する方法があります。個人として生命保険に加入する目的やメリットは以下のとおりです。

  • 納税資金が準備できる
  • 生命保険金の非課税枠が活用できる
  • 代償分割により相続争いが回避できる

会社の後継者となる親族に集中して株式を相続させたい場合には、相続争いを避けるために、他の相続人へ代償金を支払う方法があります。代償金として使用しやすい現金の準備は必須といえます。

会社に貸し付けていた「役員借入金」がある場合は、「会社に対する債権」となり相続財産が増えるため、その分相続税も増える可能性があります。

納税資金のためにも、個人として生命保険に加入しておくことで、現金の準備ができます。

被相続人の死亡により相続人が受取った生命保険金は相続財産とみなされるため、原則として相続税の対象になります。しかし、「生命保険金の非課税枠」があるため、法定相続人の数に応じた金額までの生命保険金を非課税で受取ることができます。

相続税の生命保険金の非課税枠は以下のとおりです。

500万円 × 法定相続人の数 = 非課税枠

社長が個人として生命保険に加入する場合は、定期保険や終身保険等で必要な保障額を準備するとよいでしょう。

社長として法人保険に加入する

社長として法人保険に加入する目的やメリットは以下のとおりです。

  • 当面の運転資金や借入金返済資金が準備できる
  • 自社株の買取資金が準備できる
  • 死亡退職金と勇退退職金が同時に準備できる

法人保険に加入しておくことで、会社は事業保障に必要な資金や自社株の買取資金を準備できます。社長にもしものことがあった場合は、取引先や銀行との関係に支障をきたしてしまう恐れがあるため、当面の運転資金は確保しておきたいものです。

また、後継者以外の相続人が自社株を相続する場合は、自社の経営権(議決権)が分散してしまうため、分散防止を目的として自社株の買取が必要になる場合もあります。

必要な資金を準備のために法人保険に加入する場合は、長期平準定期保険や低解約返戻金型定期保険、平準定期保険、終身保険が有効です。

「長期平準定期保険」は、保険期間が90代後半〜100歳になる商品が多いため、社長にもしものことのがあった場合に備え、長期間の保障が準備できます。また、解約返戻金もあるので、社長が勇退する際の退職金も同時に準備できます。

保険料をおさえながら保障を準備しておきたい場合は「低解約返戻金型定期保険」を活用するといいでしょう。主な保障は長期平準定期保険と同様ですが、一定期間の解約返戻率が低めに設定されているため、保険料も低めにおさえられています。

さらに保険料を抑えたい場合には、平準定期保険も活用できます。ただし、平準定期保険は解約返戻金はない、もしくはあってもごくわずかですので、勇退退職金の準備には向きません。

終身保険は一生涯にわたり保障が続きます。そのため、社長にもしものことがあった場合の保障のみならず、社長の勇退時に法人契約から個人契約に名義変更して退職金として現物支給することで、社長個人の相続税の納税資金や代償分割の代償金の準備等に活用することもできます。

まとめ

本記事では社長が死亡した時に必要な手続きや、生前から備えておきたい事業承継対策について解説しました。まずは後任の代表者を選任して、社長が行っていた業務を速やかに引き継ぐ必要があります。

社長が亡くなった直後は、悲しみに暮れる時間がないほどやるべきことが多く、関係者や取引先との慎重なやり取りが求められます。社葬を行う場合は、会場の手配や取引先への連絡が必要となるため、遺族や葬儀会社と連携して準備を進めていくとよいでしょう。

社長にもしものことがあると事業承継や相続により、周りの状況が一変します。生前贈与や遺言書の準備を社長が行っておくことで、親族や社内の人間は社長の指示通りに動くことができます。

もしもの時に備えて、これから少しずつ準備を進めていくとよいのではないでしょうか。保険を活用して相続対策を検討されている場合は「ほけんの窓口」までお問い合わせください。

  • ※本コラムの内容は、2023年4月現在の税制、関係法令等に基づき税務の取扱い等について記載しております。今後、税務の取扱い等が変わる場合もございますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではございません。個別の税務の取扱い等については、(顧問)税理士や所轄の国税局・税務署等にご確認ください。

公開日:2023年7月11日

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